A103.魅惑のナポリ・ピッツァ

2013年6月 3日 (月)

魅惑のナポリ・ピッツァ

 季節モノなので、今回は企画を急遽変更して、ナポリ・ピッツァについて書きます。
 自分がナポリ・ピッツァを食べ始めた1990年終わり頃、良くピッツァじゃなく、ピザでしょう?と言われました。
 英語でピザではなく、イタリアの食べ物なので、あくまでピッツァです。
 これは別物なのです。

 日本で初めてピザ(ピッツァではない)を出したのは、1954年六本木のイタリア料理店、ニコラス・ピザハウス。
 イタリア料理店とは言っても、アメリカの影響を受けたアメリカ風イタリア料理店。
 店で出したのも、オーブンで焼いた、生地が薄いアメリカン・ピザでした。

 その後、1985年に、アメリカの宅配ピザチェーン、ドミノピザが日本で営業を開始します。
 そのため永らく、日本ではピッツァではなく、いっぱひとからげでアメリカン・ピザが、ピザと言うくくりでした。
 1990年終盤でしょうか?どの店だか忘れましたが、ビザ生地がパリッとクリスピーで美味いと、CMで流してましたっけ。
 そのせいか後々まで、パリッとクリスピーな生地が美味いと、記憶に刷り込まれた人が多かったです。

 真のナポリ・ピッツァ協会と言うのがありまして、協会員になるためには、以下のポイントをクリアしなければなりません。

 対象はピッツァ・マリナーラ、ピッツァ・マルゲリータに限られる。
 ・円形で直径35cm以内
 ・中心部の厚みは0.4cm±10%の誤差
 ・良く挽いて繰り返しふるいに掛けられた00タイプの軟質小麦の粉と、0タイプの小麦粉
 ・20~22度で硬度中くらいの水
 ・海水でつくられた食塩
 ・市販されているビール酵母
 ・ピッツァ生地自体には油脂を混ぜない
 ・ピッツァ生地は手で伸ばす
 ・オイルとなじんだトマトソースの赤、オレガノの緑、ニンニクの白、モッツァレッラの白、緑色になるバジリコの葉
 ・レンガ製またはコンクリート製のドーム型薪窯、床面で焼く
 ・燃料は薪、または木屑
 ・ふっくらと柔らかく、しなやかで、本のような形にたやすく折り曲げられる
 ・コルニチョーネ(縁のふくらみ)は1~2cmで均一にふくらみを帯びて、気泡や焼け焦げのないきつね色
 ・窯から出された直後に食べる

 現在日本には、47軒の認定店があります。
 しかし認定店でなくとも、美味い店はキラ星の如くあります。
 上記の通り、ナポリ・ピッツァは、アメリカン・ピザのようなパリッとクリスピーな生地ではなく、良く発酵したフワフワもちもちのピッツァ生地です。
 特に名ピッツァイォーロ(ピッツァ職人)の手によると、フワフワもちもちのピッツァ生地が魔法のような美味さとなります。

 重要な事は、薪窯を使って焼き、ピッツァ生地自体がとにかく美味い事。
 例えばピッツァ・マルゲリータなら、そこに味の良いサルサ・ポモドーロ(トマトソース)、モッツァレラ、香りの良いバジリコが加わるとえも言われぬ美味さとなります。

 オーブンは問題外ですね。
 密閉された空間でピッツァを焼くと、水分が飛び過ぎて、パサパサとなり、発酵したフワフワもちもち感が失われます。
 アメリカン・ピザならいざ知らず、ナポリ・ピッツァをオーブン焼きなんてあり得ないです。
 もしも名人が焼いたなら、ガス窯で焼いたピッツァでも美味いでしょう。
 しかし、店が扱いが楽なガス窯をチョイスした時点で、美味いピッツァを焼こうと言う心意気が劣ります。
 そして現実には、ガス窯で美味い店は、ほとんどありません。

 ピッツァ(ピザ)のルーツは、ナポリ・ピッツァです。
 インドの小麦料理(チャパティやナン)がイタリアに伝わり、イタリアのパン、フォカッチャとなり、フォカッチャから発展してピッツァになったと考えられています。
 これは定説ではありません。
 学術的調査が待たれますが、インドからイタリアに伝わる中間地点、トルコ、ギリシアには、ピッツァに似た料理があります。

 最初のピッツァと考えられているのが17世紀半ば、伸ばしたフォカッチャに、ラルド(ラード)とバジリコ、チーズを乗せて作ったマストゥニコーラ。

ピッツァ・マストゥニコーラ

 写真で見ると、ただのピッツァ生地にしか見えないでしょうが、ラルドが溶け、チーズ風味のビアンカ(トマトソースを使わない)のピッツァです。

 18世紀半ばになると、ナポリの漁師の家で、マリナーラが作られるようになります。
 マリナーラとは、ピッツァ生地にサルサ・ポモドーロ、ニンニク、オルガノの乗せたピッツァです。
 店によっては、アンチョビを乗せる場合もあります。

ピッツァ・マリナーラ

 こうしてナポリでは、ピッツァが流行しました。
 イタリアが統一されたのが1862年2月、1889年に第二代イタリア国王ウンベルト1世と、王妃マルゲリータ・ディ・サヴォイアがナポリを訪れます。
 その際、当時から有名だったナポリのピッツェリア・ブランディで、ピッツァを食べに来ました。
 ピッツァイォーロ、ラッファエレ・エスポジトは、ピッツァ生地にサルサ・ポモドーロを伸ばし、モッツァレラ(モッツァレラ・ブーファラ)、バジリコの葉を乗せたピッツァを出しました。
 白がモッツァレラ、赤がサルサ・ポモドーロ、緑がバジリコの葉と、イタリア国旗に見立てて作りました。
 国王夫妻はこのピッツァを気に入り、何と言うピッツァなのか尋ねると、ラッファエレ・エスポジトは王女の名前を取って、ピッツァ・マルゲリータと答えました。

 ナポリのピッツェリア・ブランディは現存しています。

ピッツェリア・ブランディとピッツァ・マルゲリータ

 日本で初めてナポリ・ピッツァを出したのは、1993年にオープンした都立大学のTrattoria La Baracca(トラットリア・ラ・バラッカ)です。
 その後、中目黒のサヴォイの柿沼進氏、遅れて清澄白川のベッラ・ナポリの池田哲也氏のピッツァが評判を呼びました。
 2002年、ナポリのピッツァフェスタで、現地で修行していた大西誠氏が優勝します。
 2006年には同ピッツァフェスタで、サルバトーレに入社した大西誠氏始めとする、サルバトーレチームが優勝します。(2007年準優勝)
 2007年、2008年世界ピッツァ選手権で2年連続、株式会社べラヴィータ所属(当時)の山本尚徳氏が優勝します。(2009年にも入賞)

大西誠氏が焼いたピッツァ・マルゲリータ

 つまり、日本のナポリ・ピッツァは、店(と言うよりピッツァ職人)にもよりますが、本場ナポリにも負けないレベルなのです。

 ピッツァ生地は、ほとんどの店は自然発酵させます。
 梅雨時期から夏場にかけての高温多湿な気候は、ピッツァ生地をワンランク美味くします。
 冒頭に季節ものと書いたのは、こういう理由です。

 パンは同じく小麦生地を発酵させますが、通常発酵器に入れて発酵させますので、ピッツァとは違い通年気候の影響は少ないです。

 自分は夏場、雨がしとしと降ると、美味いピッツァ生地を思い描いて、ピッツァを食べに行きます。
 名人の手による、夏場のピッツァは、寒い時期とは異なるさらなる美味さです。
 そして雨は、人気店でも多少は客足が落ちるので、余計に好都合です。

 雨が降ったら、ピッツェリアにダッシュだ!

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