B4901.ススキノ便利屋探偵シリーズ

2013年5月 6日 (月)

探偵はひとりぼっち / 東直己

またまた東直己の書評で申し訳ありません。
自分は現在、文庫本化されているススキノ探偵シリーズ(ススキノ便利屋シリーズとも言う)は、全て読了しています。
物語の時系列で言うと、「半端者」、「探偵はバーにいる」、「バーにかかって来た電話」、「消えた少年」、「向こう側にすわった男」、「探偵はひとりぼっち」、「探偵は吹雪の果てに」、「駆けてきた少女」、「ライト・グットバイ」、「探偵、暁に走る」、「旧友は春に帰る」となります。
バーにかかって来た電話の2作後の作品になります。

自分は、この作品の書評を書くつもりはなかったのですが、この原作が映画化される事になり、書評を書く事にしました。

これはハードボイルド小説ですが、ハードボイルドについては、拙著の最初の部分をご覧下さい。

オカマバーの筋肉担当のオカマ、マサコちゃんが、11月末の東京の手品のテレビ番組に出て、準優勝した。
俺は札幌のオカマバー、トムボーイズ・パーティで、テレビ放送とタイムリーに、多くのオカマたちと共に応援して、店は歓喜に包まれた。

それから2日後、トムボーイズ・パーティのフローラから、東京に帰って来てすぐ、自宅マンションの駐車場で、マサコちゃんが撲殺された事を知った。
優しい心遣いで、皆から好かれていたマサコチャンの死に、オカマバーの関係者は悲しみに暮れた。
当初、犯人を探し出すと皆意気洋々だったが、警察の捜査のじゃまをしないようにと、誰も積極的に犯人探しはしなかった。

それから3ヶ月近く経った翌2月下旬になっても、マサコちゃんの殺人事件の捜査は、進んでいないように思われた。
その事を思い出した俺は、誰に依頼された訳でもないが、マサコちゃんの殺人事件の真相を突き止める決心をした。
オカマ達に聞き込みを始めたが、皆犯人探しに積極的ではなく、一様に口を閉ざしている。

調べて行くと、マサコちゃんが若い頃、北海道の革新派大物政治家、宗脇厳蔵(むなわき げんぞう)の愛人だったと言うウワサに出会った。
そのせいかどうか、警察はマサコちゃんの殺人事件の解明には積極的でなく、むしろ魔女狩りのようにオカマ達の交友関係を暴いていた。
オカマ達は皆、俺に捜査するなと警告した。
若いオカマが、マサコちゃんが若い頃、宗脇厳蔵の愛人だった事を仲間に話した途端、失踪していた。

雑誌の記事で、占い師の聖清澄(ひじり せいちょう)女史が、マサコちゃんの誠実な人柄に触れていた。
聖清澄に会いに行くと、事件解明の協力を快諾してくれた。

知り合いの暴力団組長、桐原も、この件には指一本動かす気はないと言う。
俺は各方面に、自分がマサコちゃんの殺人事件の真相を暴こうとしている事をアピールした。

そして宗脇厳蔵の最大の支持者で、こぼれた恩恵にあずかっている新堂忠夫(しんどう ただお)についても、調べ始めた。
新堂忠夫は、河川敷を違法に自動車教習センターの敷地として、無償で長年使い続けている。
1970年代半ばに、何者かに襲われ、腹を刺された事があった。

その直後、自宅前で頭を殴られ気絶したり、怪しい市民団体の堤芳信(つつみ よしのぶ)が近づいて来たり、酒を飲んでいてトイレで襲われた。
友人の高田は、自分達に車が突っ込んで来たので、跳ね飛ばしたら、別な車にぶつかって負傷した。
いつも入り浸っているケラーには、怪しい男達がたむろして行けなくなった。
ケラーを見張っていると、怪しい男達がケラーから出て来た途端、銃で撃たれた。
自宅前に張り込んでいた怪しい男に襲われたりした。

知り合いの北海道警察の刑事、種谷も相手にしてくれない。
寝る所を探して行ったサウナのフィンランドセンターでも、怪しい男達につけ回された。
行くところがなくなり、窮余で聖清澄の事務所に、1晩だけ逃げ込んだ。

調べて行くと、事件当夜、宗脇厳蔵にはアリバイがなく、かつ花束を買っていた。
そして殺人現場に、宗脇厳蔵が買ったと思われる花束があった。

知り合いの地方紙編集長、牧園がグランドホテルに部屋を取ってくれた。
友達の北海道日報、松尾がホテルに来て、新堂忠夫の甥、新堂勝利(しんどう かつとし)に会って、協議するよう奨められた。
今は宗脇は罪に服するわけには行かないが、数年したら必ず、この件に片を付けると言う。
俺は、申し出を拒否した。

牧園から、写真週刊誌「ファインダー」で、この件を載せないか提案して来た。
こちらは、仮名、目線を入れる(目に黒線を入れるあれですね)条件で承諾した。

俺は、マサコちゃん時間の犯人を突き止める事が出来るのだろうか?

東直己のススキノ便利屋探偵シリーズの中でも、この作品も500Pオーバーとページ数が多く、作者の熱気が伝わって来ます。
いつも、風呂敷広げ過ぎと書いていますが、このような陰謀ものの主題だと、それはしょうがないでしょう。
自分、あらすじを書いていて思ったのですが、東直己のススキノ探偵シリーズ以外の話、例えば榊原健三のシリーズとか、畝原のシリーズは、割とまとまりがあるのに、この東直己のススキノ探偵シリーズに関しては行き当たりばったり、そしてとっ散らかった感が付きまといます。
これは、主人公の性格に合わせて、作者が意図しているんだろうとは思いますが、この作品を少しだけ読みにくくしており、残念な事の1つでもあります。

通常、どんなに親しかったとしても、この状況で、事件解明に乗り出すのはあり得ませんよね。
でもお気楽キャラのススキノ便利屋探偵だからこそ、すんなり受け入れられます。

暴力団組長の桐原が、この件に首を突っ込むの止めろと忠告し、「みんなトラブルは嫌いなんだよ」と言うと、「俺、小学校の時から不思議だったんだ。もしかしたら俺は、みんなとは違う人間じゃないかってな。今、確信できたよ。俺はやっぱり、みんなとは違うんだ」

冒頭の、レビューを書く気がなかった理由は、ラストですね。
東直己のススキノ探偵シリーズお約束の、最後のどんでん返しではありますが、気に入らなかったのです。
他の方の書評は読んでいませんが、奇想天外ではあるものの、批判の的にもなるストーリーですね。

個人的には、予定調和的にストーリーが進み、その中からどうやって切り抜けるか・・・と言う素直なストーリーの方が良かったように思います。
それ以外は、とても良かったのですが、起承転結の結が良くないと、その作品は好きになるのは難しいです。

本来ならあらすじに、占い師の聖清澄(ひじり せいちょう)の事を書かなかったでしょう。
それなりに重要な役回りではありますが、主要なストーリーの傍流ではあります。
すぐに映画の事も、ブログにアップしますので、そこで何故、聖清澄を書いたのか、明らかにします。

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2012年3月23日 (金)

探偵、暁に走る / 東直己

またまた東直己の書評で申し訳ありませんが、この作品佳作です。
自分は現在、文庫本化されているススキノ探偵シリーズ(ススキノ便利屋シリーズとも言う)は、全て読了しています。
探偵はバーにいる」、「バーにかかって来た電話」、「消えた少年」、「向こう側にすわった男」、「探偵はひとりぼっち」、「探偵は吹雪の果てに」、「駆けてきた少女」、「ライト・グットバイ」、そして次の作品が、この作品です。もちろん長編小説。

これはハードボイルド小説ですが、ハードボイルドについては、拙著の最初の部分をご覧下さい。

俺は、地下鉄で乗客とトラブルになっていた、テレビにも良く出ているイラストレーターの近藤雅章に出会った。
近藤雅章と酒を飲んだ帰りに、地下鉄のホームに身を投げた老婆、西口タエさんを、近藤雅章自身もホームに飛び降りて助けた。

たまにケラーオオハタで、近藤と顔を合わし、酒を飲んだりしたが、それから秋、冬と季節が移り、年を越して2月。
深夜4時に、北海道日報の松尾から、近藤が自転車乗り場で、刺されて死んだと連絡があった。

俺は、近藤の死の真相を探るべく、自転車乗り場のオーナーの盗撮の件で取引し、自転車乗り場の防犯カメラ映像をDVDに落としてもらい、犯人映像をプリントして、立花連合の桐原組長や、占い師の濱谷のばあさまを始めにして、あちこちにバラまいて探して回った。
俺を敵視する北栄会の桜庭組長が、俺の行動を気にしているらしい。

近藤の行動を調べていると、近藤が、自殺しようとした西口タエさんを気にして、度々西口さん宅に足を運んでいた事を知った。
札幌外れの中郷通り商店街に、かつて西口タエさんのご主人がやっていた西口書店があった。
現在、廃業した西口書店の建物はそのままに、向かいのホビーショップ大岳が所有している。
西口タエさんは、若い時はきれいで、大岳の初恋の人だったが、現在はボケたようで、もう廃業している西口書店の建物に時々来るのだと言う。

テレビに出た時に、歯に衣着せぬ言動の近藤は、低脳発言されたチンピラ達や、コケにしたダンスフェスティバルのSO-RANの連中からも敵視されている事が分かった。
インターネットのチンピラ板は、祭り状態だが、知り合いのエンジニアの金浜に分析させると、テレビで「クズ、寄生虫」発言した時には平穏で、犯行前日の午後からテレビ発言の怒りの書き込みが増えたのだと言う。
つまり、インターネットの祭りは、偽装ではないかと・・・

再び、中郷通り商店街に行った際に、ガキにナイフを突きつけられ、襲われた。
その後、松尾と金浜と3人で飲んでいて、女と意気投合して店で酔っぱらって正体を無くしていた時、店が火災にあって殺されそうになった。

近藤を殺害したガキの写真を見て、美人バイセクシャルのアンジェラの知り合いが、ガキが着ていた珍しいデザインのフード付きパーカーを着ていた男と、石狩の森の生振でトラブルに合ったと言う。
その一団を松尾に調べてもらうと、石狩の森で産廃業者をしている、萩本源(はじめ)と言う男を知った。

濱谷のばあさんのところから、珍しいデザインのフード付きパーカーを着ていた男が、西線十六条の賃貸マンションにいたと言う情報があり、行ってみたが不在だった。
賃貸マンションから出ると、北海道日報系のテレビ局、SBCの張り込み班から声をかけられた。
振り込め詐欺の犯人宅を突き止め、張り込みをしていると言う。
北海道警察には、振り込め詐欺団の事を、逐一報告しているが、今のところ動きはなし。

近藤が、ケラーで葉巻を吸っていた事を思い出し、ケラーの手前のシガーバー、T BARに行った。
マスターの話を聞くと、近藤がロミオ&ジュリエットのチャーチルを吸った日、T BARに近藤と一緒にいたのが、多重債務者救済のNPO団体を主宰している、大瀧。
大瀧は、近藤が刺されて以来、行方不明になっている。

灯台下暗し、怯えた大瀧を逃がしたのは、桐原だった。
桐原経由で、大瀧に連絡して、西口タエさんが、振り込め詐欺グループの被害者で、近藤の依頼で大瀧が振り込め詐欺グループに警告した直後に、刺されたのだと言う。

東直己のススキノ探偵シリーズの中でも、とりわけページ数が多く、作者の熱気が伝わって来ます。
それは良いとして、反面それは欠点でもあり、風呂敷広げ過ぎ、あれこれストーリーがパズルのように組み合わさって、かえってとっ散らかってるようにさえ思えます(笑)。
東直己のススキノ探偵シリーズお約束の、最後のどんでん返しもありますので、よけいにとっ散らかり感がありますね。
それは、上記のあらすじを読めば、お分かりでしょう?
察しの良い方なら、上記のあらすじだけで、結末は分かるかも知れませんね。
それでも、読んで面白い作品です。

まず前作、「ライト・グットバイ」から登場した、元自衛隊員で、化けるとロリータに見える美人バイセクシャル、アンジェラ。
ススキノ探偵の相棒、高田以上の空手の使い手ですが、空手の腕前を披露する機会は、今のところありません。
前作もおとり役で大活躍しますが、今回もススキノ探偵を助けて大活躍します。

今作から登場した、恐らくフリーのシステムエンジニアの金浜。
金浜は、「駆けてきた少女」からの登場でした(下川澄人氏指摘による)。
ススキノ探偵によると、マゾなんだそうです(笑)。
無給で、ロクでもない仕事をススキノ探偵から押し付けられ、口癖は「ひでぇ!」
しかしロクでもない仕事を、確実にこなします。

今作から登場した、不随の相田の面倒を見ている、超真面目な青年、石垣。
これまた終盤で、大活躍します。
自分はかつて、この石垣に似た人を、見た事があります。

「駆けて来た少女」から登場した、濱谷人生研究所・・・実は女のたまり場にいる濱谷のばあさん。
うさん臭い霊能力者ですが、しかし今回は少しだけの登場。

ススキノ探偵の周辺は、ますます魅力的なキャラクターに溢れます。

高田は、アンジェラの登場と共に、ススキノ探偵シリーズの武闘派役ではなくなりますが、今作も重要な役割を果たします。

そして、ススキノ探偵シリーズの名作で重要な役割を果たした登場人物が、今作で終盤に重要な役割を果たします。

一方、「駆けて来た少女」の前くらいに発覚した、北海道警察(以後道警)裏金事件の影響か、本作でも、道警はボロくそに書かれています。
道警関係者は、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とでも思っているかもしれませんが、失った信頼の回復は大変です。

本作で、桐原組長と、不随の相田若頭との出会いのきっかけが、語られます。
893に、博徒系と的屋系だと言うのは知っていましたが、その他にコトワケ、ラッパ、コーギョーなんてルーツがあるのは、今まで知りませんでした。

そのハードボイルド小説が好きか嫌いかは、ハードボイルド小説の世界観が好きか嫌いかと言う事であり、自分は1作目、「探偵はバーにいる」からこの世界観が好きで、かつ作を重ねる毎に、さらに魅力的な世界観になっています。
その一方、ススキノ探偵シリーズで、イマイチだなぁ・・・と思う作品は、果たしてストーリーのプロット(直訳では計画を意味し、あらすじを立てる事を指す)をちゃんとしてるのか、疑いたくなる事があります。
このとっ散らかった作品では、きっとプロットをしている事でしょう・・・多分。
そしてとっ散らかっているなりに、魅力のあるストーリーではあります。

ちなみにガンバって、あらすじをまとめてみましたが、これでストーリーをイメージ出来ますでしょうか?

自分は、ススキノ探偵シリーズの最後の最後のどんでん返しが、いつもストーリーの蛇足にしか思えず、好きになれません。
シンプルに、そのまま終われば良いのにと思います。
謎解きは、シャーロック・ホームズファイロ・ヴァンスエルキュール・ポアロ明智小五郎金田一耕助にでも任せれば良いのです。
畝原シリーズとか、榊原健三シリーズにはこの、最後のどんでん返しはないので、ススキノ探偵シリーズだけの特徴ですね。

それでいても、本作が良作である事に変わりなく、ボリュームはありますが、読み終えて、心地よい疲労感のみがあるでしょう。
そして少しゾッとし、また皮肉な結末でもあります。

もし、ススキノ探偵シリーズを知っているなら、必読の作品です。
ススキノ探偵シリーズを知らない人でも、ボリュームがあるので、読み始めるのに決心が要りますし、事件が起こるまでは冗長ではありますが、無駄なストーリーではありません。
読後には、満足するだろうと思います。

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2011年9月24日 (土)

探偵は吹雪の果てに / 東直己

またまた東直己の書評で申し訳ありませんが、この作品大傑作です。
自分はおおよその出版順、「探偵はバーにいる」、「バーにかかって来た電話」、「消えた少年」、「向こう側にすわった男」、「探偵はひとりぼっち」と読了しました。
そして次の作品が、この作品です。もちろん長編小説。

これはハードボイルド小説ですが、ハードボイルドについては、拙著の最初の部分をご覧下さい。

北栄会花岡組の組頭補佐、芳野達に袋叩きにされ、やっとの事で、高田の店までたどり着いた俺は気を失い、池谷の病人に入院した。
そこで、死んだはずのかつての恋人、純子に再会する。
芳野達の袋叩きの際、何度も立ち上がった俺に感銘したのか、芳野の手下が、芳野達が病院に襲撃に行くと教えてくれた。
そんな矢先、純子から手紙を預かり、斗己誕(とこたん)町の奥寺雄一まで届けて欲しいと言う。

斗己誕は、JRが廃線になり、深川駅からバスで行かなければならない。バスの本数は、2時間に1本程度。
そんな田舎町だが、昨年の秋の終わり、高校生が同級生をバットで殴り重症を負わせ、家に帰って姉をバットで殴り殺した事件があり、ワイドショーで盛んに放送されるなど、有名になった。
犯人の高校生は、目下行方不明。

もっけの幸いと、純子との約束を果たすべく、入院を切り上げ、着替えて斗己誕に向かった。
斗己誕の奥寺雄一邸は豪邸で、本人は東京にいて不在。
町の人間は、自分に対して、よそよそしい。
自分をマスコミ関係者だと、勘違いしている。

斗己誕は、長年町長を務めた奥寺に牛耳られており、その手先が森一族。
森一派が、わが世の春を謳歌し、斗己誕の多くが森/奥寺の言いなり。
殴られて重症を負った高校生は、森の息子で、親の威光を笠に着て、陰惨ないじめをしていたんだそう。

俺は、奥寺雄一が斗己誕に戻るまで待つ事にしたが、外出中に宿泊していた部屋が荒らされていたりと、歓迎されていないようだ。
注意していたのだが、入浴中に純子からの手紙を盗まれてしまう。
俺は、好むと好まざるとに関わらず、森一派と相対しなくてはならなくなった。

斗己誕は実在の町ではありません。実在だったら、大騒ぎになるでしょう(笑)。
バスに乗った深川駅は実在します。
オチアイに送られた、鷹栖インターも実在します。
深川駅からバスで1時間半、名寄から1時間。地理的には、国道275号沿いと思われますが、該当する場所には町はありません。
しかし、深川市と名寄市の間に幌加内町があり、幌加内町にはかつて深名線があり、現在は廃線・・・位置的には異なりますが、この辺が斗己誕のモデルだと思われます。

JRの民営化で、北海道のかなりのローカル線が、廃線になりました。
自分の祖母の家への路線も、廃線になりましま。
2時間に1本くらいしか走ってなく、場合によっては車両に客1人なのに、なぜか10両以上の編成とか・・・地域住民の方には申し訳ありませんが、そんな路線は、民営化したら廃線になっても仕方ありませんよね。

知らない町に行って、町のごたごたに巻き込まれる(自ら巻き込む?)有名な作品に、ハードボイルド創生期の大作家、ダシル・ハメットのコンチネンタル・オプシリーズの長編、「血の収穫」があります。
黒澤明監督の名作、「用心棒」は、「血の収穫」を時代劇に書き直したもので、ストーリーは一緒です。
ハヤカワですから、小説の裏側に書かれているストーリーを読んだ時、すぐに「血の収穫」を思い浮かべました。
ハヤカワのあらすじ・・・ネタばれさせ過ぎ!

ビックリです!?これまで、1年から2年おきに年を取りながら作品となったススキノ探偵が、一気に年を取り、この作品では45歳です。
まず、ススキノ探偵のプライベートですが、「バーにかかって来た電話」で出会った中学教師の春子と、「消えた少年」の事件で付き合うようになり、「探偵はひとりぼっち」の後、春子と結婚し子供を持ちます。
その後離婚、その息子も現在中学一年生。
太くなったのを気にしていましたが、この作品ではデブと呼ばれています。

ちなみに同じ名なしの探偵である、コンチネンタル・オプも、デブです。

作品に登場する音楽もUAの「青空」とか、現在に近づいて来ています。
余談ですが、個人的には、「温度」が好きです。

これまで、作品中で度々語られていた、昔大事な人を亡くした・・・と言う、大事な人が、今回驚きの再会をした純子。
純子は、どうしてススキノ探偵の前から、死を装うっていなくなったのか?・・・は、ストーリーで語られています。
こんな経験をした事がある人なんて、ほとんどいないでしょうが、ヤバい世界にも片足突っ込んでいるススキノ探偵ですから、アリとしましょう。

今までの作品と違い、高田の登場は冒頭のみで、高田の格闘シーンは皆無です。
高田は、北大大学院を卒業して、小さな飲食店をやっていますので、昔のように無鉄砲に格闘とは行かないでしょうね。

ストーリーの展開のさせ方が、秀逸ですね。
手紙を渡すだけの、簡単な任務・・・ススキノ探偵もそう考えて斗己誕に乗り込みますが、町が色々とおかしい・・・様々な謎が提起されます。
正直、ストーリーの半分くらいまでは、色々な謎を、ここまでとっ散らかせて、どうすんだろう?って思いましたね。

斗己誕ほど腐敗した町は、現実にはないと思いますが、事の軽重はともかく、地方でも中央でも、政治によって甘い汁を吸おうとする人、その甘い汁に群がる人はいるでしょう。
また観光地でもない田舎は、閉鎖的なところもありますからね。

その時点(ってどの時点?)まで、純子に手紙を託された意味が分かっていなかった、ススキノ探偵ですが、次々と気に食わない出来事が起こります。
遂には、必死にならなくてはならない事態が起こり、吹雪の中、スノーモービルに乗って、森一派と対決に向かいます。

余談ですが、映画「探偵はBarにいる」で、スノーモービルを使用したのを、散々リアリティがないと書きましたが、それは交通の発達した札幌近郊の事。
斗己誕のように、交通の便の悪い場所・・・ましてや斗己誕郊外なら、大雪が降ると、除雪車が来ない限り、雪に閉じ込められる恐れがあり、金持ちならスノーモービルを持っていても、不思議ではありません。
さらに目的地に、より早く着くために、道なき原野を行きますので、それは車では不可能で、スノーモービルでないと行けません。

田舎の人で、同じ言葉を何度もリフレインする人はいますが、ここまではひどくないでしょう。
面白かったんで、良いですけどね。

伏線に気付けば、予想通りのストーリー展開・・・でも伏線はうまく隠されています。
バタバタと畳み込むようにラストに向かい・・・パズルのように謎が解け、ラストは甘く、切ない。

ストーリーは、「血の収穫」と全然違い、むしろもっとリアリティと親近感があり、「血の収穫」よりこの作品の方が好きです。
ロス・マクドナルドのリュウ・アーチャーシリーズは言うに及ばず、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」より、甘く切ないこの作品が好きです。
コンチネンタル・オプ、フィリップ・マーロウ、リュウ・アーチャーよりはるかに間抜けで、何の役にも立ちませんが、ススキノ探偵の方が、良い酒飲みでしょう。
あえて難点を言えば、もっとシンプルかつ骨太なストーリーだったら、更に良かったと思います。

日本では、古典ハードボイルド御三家と呼ばれるダシル・ハメットレイモンド・チャンドラーロス・マクドナルドが、この作品を読んで、天国で歯ぎしりしているかも知れません(笑)。

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2011年9月21日 (水)

向こう端にすわった男 / 東直己

またまた東直己で、ごめんなさい。
実は別の作家の、別の作品を予定していたのですが、ススキノ探偵の紹介したい作品が溜まったんで、急遽変更しました。

これはハードボイルド小説ですが、ハードボイルドについては、拙著の最初の部分をご覧下さい。

この本は現在のところ、東直己のススキノ探偵シリーズ唯一の短編集です。

世の中面白いもので、長編小説ばかり読んでいる人は、偏見で、内容が薄いんだろうと、短編小説を読まない人が多いです。
一方、短編好きな人は、いつでもどこでも読み始められる手軽さがないため、長編小説には手を出しにくくなります。
かく言う自分も、短編ばかり読んでいた時、次に読んだ長編小説が、読むのが苦痛でしたね。現在は、克服しましたが。

短編小説が内容が薄いと思っているなら、それは偏見です。
小説とは、小説家が表現したいストーリーを文章で描く事であって、文の長短は作品の面白さとは関係ありません。

ハードボイルドで言うならば、創生期の大作家、ダシル・ハメットコンチネンタル・オプシリーズやサム・スペードシリーズの多くは短編です。
例えばカート・キャノン/エド・マクベインの「酔いどれ探偵街を行く」のシリーズも短編集です。
この中には、傑作も何篇かあります。
小説を読むのが好きなのに、短編を読まないのは、読書の楽しみを半分捨てているようなものです。

短編集では、1冊に1編面白い作品があったら、もうけものと言う感覚で読んで下さい。
その1編が、大傑作なら、下手な長編なんて、読んでられるか!ってぐらい、お得です。

ちなみに作家によって、短編が得意、長編が得意、両方得意とカラーが分かれます。

この短編集は、1992年から1996年にかけて書かれたもので、恐らくは長編の1992年年5月「探偵はバーにいる」以後、1993年1月「バーにかかって来た電話」、1994年10月「消えた少年」、1998年4月「探偵はひとりぼっち」のススキノ探偵の間隙を埋める作品です。


向こう端にすわった男

ゲイター」、「ロンググッドバイ」、「さらば愛しき人よ」の3本のハードボイルド映画を見て、ケラー・オオハタで気分良く酒を飲んでいると、30代後半、あるいは40代の大柄な男が入って来て、自分の向こう側にすわった。
ケラー・オオハタの先代からの客らしく、珍しいドイツのジン、「シンケンヘーガー」を静かに飲んでいた。
バーに電話がかかり、その男・・・フジタ宛に電話がかかって来た。
電話の様子から、フジタはトラブルに巻き込まれているようで、俺はススキノ探偵の面子から、協力を申し出た。

初出「ミステリィマガジン」1992年7月号。

短編小説は、短い枚数で全てを表現しなければらなず、無駄な文章なんて書けません。
前半の、伏線に気がつけは、オチは想像通り。

ドイツのジン、「シンケンヘーガー」って、この小説で知りました。
今度飲んでみようかな。

でもお茶目な事が好きな自分・・・こんな事やっちゃいそうだなぁ。
やり遂げて、10分間位大爆笑だったでしょう。


調子のいい奴

途方に暮れた中年サラリーマン(実は32歳)、岡崎から、22歳の恩師の娘、池田美佐子が結婚詐欺に遭っているかもしれないから、調査して欲しいと言うもの。
池田美佐子の相手は、いかがわしい会社が集まる場所にある、「メディア・アソシエイツ」の伊野田と言う、20代後半の社長。
伊野田は、元一流商社マンだったが、脱サラして会社を興した。
それほど儲かっていそうでもないのに、伊野田は高級クラブに通い、ホステスの美佐子に高価なプレゼントをし、ソウル旅行にも連れて行っている。

「メディア・アソシエイツ」岡崎から提示された調査方法は、伊野田の会社に、ススキノ探偵が就職して、伊野田を調べると言うもの。
ススキノ探偵の大学時代の同級生の経歴を脚色して履歴書を書き、知人の会社、「さっぽろへんてこ通信」にも在籍した事にし、口裏を合わせてもらうよう依頼した。
予想に反して、破格の待遇で簡単に「メディア・アソシエイツ」に入社出来、しかも伊野田の仕事について回る事になったが、仕事をもらえるはずの、大手の担当者から相手にされておらず、会社は何で収入にしているのか、怪しい状況。
一流商社在籍時代も評判が良くなく、その事実を岡崎告げ、依頼は簡単に終了するはずだったのだが・・・

3日後、岡崎から助けて欲しいと、依頼があった。美佐子にこの事を話したら、聞く耳もたない美佐子が怒りまくった。
それでも気になった美佐子は、伊野田に問いただし、逆に伊野田に丸め込まれたそうなのだ。
再度調査をしたススキノ探偵は、くだらない奴らに辟易(へきえき)しながらも、核心に迫る。

初出「イエローページ」1994年1月~7月号。
イエローページって、小説載せるんでしたっけ?

この作品は、大傑作です。
次に紹介予定の「探偵は吹雪の果てに」、「バーにかかって来た電話」に次いで傑作です。
短編でも、長編でも傑作が書けるとは、素晴しい!

どこの世界にでも、ほら吹きはいますし、中には大風呂敷を広げ、ビジネスにつなげている人もいます。
これって、場合によっては、詐欺すれすれなんですね。
自分もそんな人に出会った事がありますが、あの情熱的なまでに熱心な様は、引き込まれる人がいても、不思議ではありませんね。
自分は、運よく引き込まれはしませんでしたけどね。

仕事で夢を描き、もしもそれが1つずつ実現して行くなら、素晴しい事ですよね。
そんな人達は、その辺を突いて来ます。

ですので、ススキノ探偵の調査対象の伊野田社長には、とてもリアリティを感じます。
世の中には、あり得ないような嘘で騙される、ダメンズ好きの女性もいますよね。
美佐子と言う女性もリアリティを感じます。

この作品の面白さは、ススキノ探偵の依頼人岡崎、伊野田社長、美佐子のごたごた振り、ラストに至るまでストーリーのプロットです。
ススキノ探偵は、この作品で、初の就職をします。

ラストは、爽快に苦笑します。
現実の女にも、こんなに強い生き物はいますよね。
美佐子の場合、相も変わらず、ダメンズをつかんじゃうんだろうなって、思いますけど。

ネアンデルタール人友の会に、入会したいです(笑)。


秋の終わり

薄野の客引きノブが、幼なじみが北二十四条のホンサロで働いているので、助けて欲しいと。
小学校の同級生で、少々知恵遅れ気味な女で、いじめられてもへらへら笑っていたが、ノブが理由もなく殴られて、鼻血を出した時、ちり紙をくれた事があるんだそう。
女は、中学の時に妊娠したらしく、学校に来なくなった。
ヤクザに、監禁状態のホンサロから助け出して、婦人相談所に入れるべく、ススキノ探偵、高田、ノブの3人は、北二十四条に向かった。

初出「ミステリィマガジン」1994年7月号。

この短編では、高田初登場、そして唯一の登場作です。

北二十四条から数駅先に、自分の友人が住んでいて、何度も行った事があり、土地勘があります。
関係ないですが、北二十四条には、自分が札幌に行った時、必ずと言って良いほど行く、居酒屋がありました。
もう、15年くらい行っていませんが、まだあの店はあるんでしょうか?

これまた関係ありませんが、その友人は、北二十四条のかわいいお姉ちゃんに、入れあげた事があります。
今思うと、相手が良い人だったんで、犯罪に巻き込まれるような事はなかったんですけどね。

まともな判断の持ち主なら、こんな相談を受けて、どうしたら良いか分かりますよね?
しかしある意味、東直己の筆力で、自然に北二十四条へ行くのを良しと、しちゃいますね(笑)。
ホンサロの実態はリアリティがあり、東直己の想像だけではないと思います。

これ以上書くと、ネタばれは避けられませんので、この話は、ここで筆(キーボード)を置きます。


自慢の息子

俺は、「木村さん」に、まだ夜は冷え込む春先に出会った。
「木村さん」は、いつも夏場に、札幌に流れて来る、半分浮浪者で、建具の修繕みたいな事をやって、日銭を稼ぐ。
この季節の夜は辛かろうと、ごみ場をあさっていた「木村さん」を、ごみ場のようなススキノ探偵のアパートに連れて来た。
「木村さん」は、息子が小学3年の頃、会社の使い込みがバレ、女房と離婚して、人生を転落した。
春に新聞で、息子が大学に合格したのを知って、故郷の札幌に、いつもより早く来たのだそう。
俺は、「木村さん」から、別れた女房の行方探しを依頼された。
最初断りながらも、自分が先に奥さんに会って、意思を確認してから引き合わせれば良いと、俺は簡単に考え、引き受けた。

初出「ミステリィマガジン」1995年11月

ズレている人は、どこにでもいるもので、しかも本人は全然ズレていると思っていないから、ずっとズレ続けますよね。
ここまで迷惑な人ではないですが、ズレている人には心当たりがあり、「木村さん」にはリアリティを感じますね。

もしも人に情がないなら、世の中は、何と計算通りに運ぶ事でしょう。
でも、情があるからこそ、素晴らしいとも、ばかばかしいとも言えますよね。

こんなはずじゃなかったのに・・・と「木村さん」は思ったでしょうが、良く考えれば、事前に結果は分かるでしょう?
自分とすれば、この短編では2番目に好きですね。


消える男

俺はディスコ(設定がバブル前なんでw)を起業しようとしている森中社長に、池田と組むのをやめるよう、池田のいる前で進言した。
池田はかつて、参加していたガキ向けのイベントを企画していた際、俺がスポンサーから集めた金を持ち逃げした。
池田は、札幌の飲食関係者から小金を借りっぱなしにしていて、イベントに首を突っ込んでは、金をかすめ取っている。

森中社長は俺の進言通り、池田を通さずに、池田の下請け予定だった、飲食店の設計、企画、コンサルタント会社、「ヘパイトス80」と直接やり取りする事にした。
腹を立てた池田は、「ヘパイトス80」のスタッフ、そして俺に嫌がらせを仕掛けて来た。
ところが「ヘパイトス80」の井林社長は、なぜか、池田と正面から事を構えるのに消極的だ。
学生運動の頃からの井林社長の盟友、「ヘパイトス80」のデザイナー桑田さんは、一人行動を開始した。

書下ろし1996年9月

自分が、人生の寄り道をしていた頃、ひょんな事からイベント屋と出会いました。
池田のような人ではなかったですが、それほど親しくしていた人ではないので、実際は分かりませんね。
人種的には、先の伊野田社長と、似たり寄ったりです。

少ない紙数に、森中社長とのやり取りから、池田の嫌がらせ、そして井林社長と桑田の学生運動時代と、色々な話を詰め込んでいます。
いくら何でも詰め込み過ぎで、もう少し1つ1つを丁寧に書いて欲しかったですね。
ある意味、短編小説では、あまりこんなに手を広げるのは、良くないでしょう。
一応、きれいにさばいて、終わらせていますが、何だかスッキリしません。

学生運動については、自分はさっぱり分からないので、機会があったらその時代にどっぷり漬かっていた人に、意見を聞いてみたいですね。

近日、傑作の「探偵は吹雪の果てに」の書評をアップ予定です。

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2011年6月22日 (水)

バーにかかってきた電話 / 東直己

探偵はバーにいる」に続く、ススキノ探偵第2作目。

いつもの、「ケラー・オオハタ」で酒を飲んでいた俺に、コンドウ・キョウコから電話がかかって来た。
それが、事の始まりだった。
銀行の口座に、十万円振り込んでいて、依頼内容は、サッポロ音興と言う会社の社長の南に、昨年の八月二十一日に、カリタがどこにいたか、尋ねて欲しいと言うもの。
楽な依頼内容なのに、額が十万円・・・不審には思ったものの、サッポロ音興の南に合って、尋ねてみた。
敵意を剥き出しにされて、会社から逃げるように帰り、誰かに、帰りの地下鉄のホーム下に突き落とされた。

昨年の八月二十一日に、何があったのだろう?
フィリピンで、政治家のベニグノ・アキノ・ジュニアが暗殺され、道南の派出所を襲撃した暴走族の逮捕、別の暴走族がアベックを恐喝、女をからかっていた暴走族を注意した会社社長が袋叩きにあって殺された、三人の親子連れが大通公園の噴水でハトをいじめてビニールに入れて持ち帰った・・・等々。

ホームに突き落としたやつに、思い知らせてやろうと、サッポロ音興の周辺を調べ、カリタを尾行すると、則天道場と言う右翼団体に行き着いた。
更に調べると、昨年6月に、地上げ騒動があったビルの火災の際、ビル内で刺されて死んだのが、近藤京子だった。
則天道場は、そのビル火災に関係ありそうだったが、警察の取り調べ前に、則天道場に住み込んでいた被疑者の若者が不審死した。

バーに電話して来たのは、誰なのだろうか?

ススキノ探偵シリーズの1作目、「 探偵はバーにいる」のストーリーは地味過ぎて、この路線で映画になるのだろうか?と思いました。
しかしそれは杞憂で、1作目とは打って変わった、インパクトのあるストーリーですね。
しかも、1作目と作風が変わってはなく、セオリー通りのハードボイルドの展開です。

1作目は、ハードボイルド好きは喜ぶでしょうが、一般受けはどうかなぁ・・・と思っていましたが、この作品は、万人に受ける面白い作品だと思います。
自分が今まで読んだハードボイルド小説の中でも、上位の面白さです。

普通ならバーで飲んでいて、突然見知らぬ女から、電話がかかって来る自体あり得ませんが、1作目からススキノ探偵の酒グセの悪さは折り紙つきで、そんな理由で自然に話を進めています。
昨年の八月二十一日、その日に起こった事件、サッポロ音興、則天道場、地上げビル火災、死んだはずの近藤京子、最初から様々な謎が投げかけられまして、最終的にパズルのように組み合わさって、ラストへと至ります。
1作目と比べ、死体の数は増えますが、それもリアリティを損なうものではなく、自然なストーリーの流れで起こります。

ススキノ探偵は、これで飯を食っている訳ではなく、博打で稼ぎ、悠々自適な生活を送っていますが、こんな危ない事件に、よくぞここまでのめり込むなぁ・・・と言う感じはします。

今回、ススキノ探偵の破天荒なエピソードがありました。
クリムゾンと言うスナックで、20代前半の会社員の若者が、べろんべろんに酔って、ヤクザ気取りで暴れていました。
スナックのママからの電話で、ススキノ探偵が駆けつけ、空手で失神させて、下半身を裸にしてエレベータに乗せ、警察に「裸の男がいる」と通報しました。

こんな破天荒な主人公なのですが、本人の描写にも、札幌の描写にも、妙にリアリティがあるなと、1作目から思っていました。
インターネットで見て知ったのですが、東直己は、北海道大学中退、その後職を転々とし、最終的に作家になりました。
つまり、作家になったと言うゴール以外は、ススキノ探偵と、軌を一にしている訳ですね。
実体験だとすると、妙にリアリティを感じるのも、うなずけます。

自分は、作者のミス・ディレクションにまんまとやられ、ラストにはアッ!と言ってしまいました。
東直己、ニンマリと言ったところですね(笑)。

この小説が、探偵はbarにいるの原作になる訳です。
エピソードてんこ盛りで、全部映画にしちゃうと、3時間以上かかりそうです。
そんなに長い時間の映画には出来ないでしょうから、上手にストーリーを捌けば、2時間前後の長さには出来るでしょう。

予告映像が、こちらです。
この映画、これだけしか情報がないのですが、次回は映画について、思うところを述べたいと思います。

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2011年6月17日 (金)

探偵はバーにいる / 東直己

自分は、ハードボイルド小説大好きです。
ハードボイルド小説は、暴力とは関係ありません。
一部に偏見があるようなので、ハードボイルドについては、拙著の最初の部分をご覧下さい。

この本を買った理由は、自分が20代後半に、自主失業していた時に、ハードボイルド小説なんか書いて、応募したりしていました。
それを知った札幌在住の自分の友人も、札幌を舞台にしたハードボイルド小説を書こうとしました。
でも、小説に1の事柄を書こうとすると、それに付随する10くらいの知識がないと、厳しいんですね。
友人は、ストーリーのプロットもなく、書き始めましたが、起承転結の起から先は、何も思い浮かばず、あえなく挫折しました(笑)。

ってな事があり、本屋でこの「ススキノ探偵シリーズ」を手にして、「へぇ・・・札幌を舞台にしたハードボイルド小説なんだ」と、それくらいのノリで買って読む事にしました。


俺は、いつもの通り、ススキノの「ケラー・オオハタ」で飲んでいたら、頼りなげな、若い大学生から声をかけられる。
大学の後輩らしく、名前は原田誠。俺の事を大学の三村助手から、探偵みたいな、人探しとかしていると聞いて、藁にでもすがる思いで、やって来た。
半年くらい前、合コンで知り合って、現在半同棲状態の諏訪麗子が、四日前から行方不明なんだと言う。

原田から見せられた諏訪麗子の写真は、美人でも不細工でもない地味な、ありふれた容姿で、知恵が足りなく見えるが、素直な笑顔だった。
最初は、男と女のありふれた話と、いい加減に聞いていて、軽く諏訪麗子の周辺を調べてみた。
銀行の預金通帳には、三日に二日くらいの割合で、二万円から五万円の入金があり、売春していた事を伺わせる。
失踪した日に、五十万円引き出されている。

原田と半同棲状態の、諏訪麗子のアパートを調べると、失踪した土曜日の朝刊一面の殺人事件の記事に、興味があったように思われた。
その殺人事件とは、ラブホテルのジョイン・シャトーで、売春婦と待ち合わせしていた男が刺されて殺された事件。
失踪と、殺人事件は、関係あるのだろうか?

ぼったくリバーの被害者、クラブ笹のツケを踏み倒そうとする男への警告の依頼、そんな依頼をこなしつつ、俺は気乗りしないまま、引き連られるように、諏訪麗子失踪の依頼にのめりこんで行く。

日本人の有名なハードボイルド作家と言うと、大藪春彦生島治郎北方謙三大沢在昌ってなところでしょうか?
特に、大藪春彦の「野獣シリーズ」は、殺人と暴力に満ちていて、あれが本物のハードボイルド小説なら、自分は一生ハードボイルド小説なんか、読まなくても良いと思ってしまいます。

しかし、そこまで有名ではないにしろ、矢作俊彦のマンハッタンオプの短編集とか、都筑道夫の探偵西連寺剛シリーズの短編集やべらぼう村正の短編集、原尞の探偵沢崎シリーズなんかは、自分が考える良質のハードボイルド小説です。
ハードボイルドには分類されないかもしれませんが、船戸与一佐々木譲にもハードボイルドの手法を用いた、素晴らしい作品が多くあります。

ハードボイルド小説とは、主人公の視点を通して、主人公の主義、主張の元、事を進めて行く小説です。
一般の小説でポピュラーな、3人称のハードボイルド小説もありますが、かなりの少数派で、1人称で語られるのが一般的です。

ハードボイルド小説では、1人称で語られる以上、主人公の名前は必要ではなく、しばしば名無しの主人公と言う設定があります。
例えば、ハードボイルド小説創生期に、初めて商業的に成功した作品、ダシル・ハメットのコンチネンタル・オプシリーズ、ビル・プロンジーニの名無しの探偵シリーズ、先に挙げた矢作俊彦のマンハッタンオプシリーズも名無しの探偵ですね。

この、「探偵はバーにいる」は、主人公の名前不祥な俺と言う、1人称で書かれています。
この先、名前がないのは面倒なので、以降主人公を、ススキノ探偵と呼びます。

1992年に出版されたこの作品、当初は日本になかった、奇異なハードボイルド、軽ハードボイルドなどと言われたそうです。
どうして、そうなっちゃうの?

ススキノ探偵は、ひんぱんにお茶らけ、それで、軽ハードボイルドと言われているのだろうと思います。

しかしハードボイルド好きなら、フィリップ・マーロウリュウ・アーチャーの皮肉なセリフに、ニヤッと来る事もあると思います。
別に軽口が多くなったところで、このハードボイルドの値打ちが、下がるでしょうか?
むしろ、よく読んでもらえば分かるのですが、この作品、実に良くハードボイルドのツボを押さえた作品だと思います。

舞台は恐らく、ゼビウスが流行り、ソープランドではなくトルコ風呂と呼ばれ、風俗営業法実施前と言えば、1983年暮れじゃないかと思います。

この作品では、ススキノ探偵がどんな商売で食っているか不明瞭・・・いや、博打で飯を食っていそうな事は、ぷんぷん臭っています。
日本には、アメリカと違い、探偵許可証はありませんが、ススキノ探偵が、真に探偵かと言えば、ちょっと違います。
むしろ、ススキノ便利屋と言った方が良いし、しかもその仕事では、飯を食っていません。
人探しで、飯を食っていないのに、あれほどのめり込んでしまう・・・

まず、地味な話ですね。
テーマは人探しで、多少の乱闘シーンもありますが、それほど人が死なないし、派手なカーチェイスもない。
第一、札幌に住んでいるのに、ススキノ探偵は、車も運転免許も持ってないし・・・
話に入る前に、一人死んでて、話の流れで、もう一人死んでしまいますが、それくらい。
逆な言い方をすると、だからこそ、リアリティを感じます。

良い小説とは、どんなものでしょう?
その小説の中に、人が生きている空間があり、それが地球上の(時には宇宙とか?天上界とか?)どこかに存在しそうな世界。
この作品の、いくつかのエピソードは、もしかして東直巳の実体験?と思えるほど、リアリティがあります。

自分は、北海道出身で、札幌出身ではありませんが、親戚も居、友人も住んでいて、何度も行った事があり、多少は土地勘もあります。
この小説を読めば、舞台となった場所に行けるくらい、札幌を精巧に描いています。
ついでに言うと、リアルなまでに盛りだくさんに出て来る、北海道弁。
自分は、懐かしく読ませてもらいましたが、北海道出身じゃない人は、分かるのでしょうかね?

ぼったくリバーの被害者とか、クラブ笹のツケを踏み倒そうとする男への警告の話とか、枝葉の話はありますが、ストーリーは骨太に、諏訪麗子の捜索を中心に進んで行く。
ラッキーな偶然もありますが、普段ススキノ探偵が飲み歩いているツテから情報を収集し、核心に迫って行きます。

敢えて難点を探すと、モンローの登場が唐突だった感がありますね。
果たして最初から、モンローを準備していたのでしょうか?

ラストは、いろんな意味でおめでたく、苦笑してしまうところも良い。
自分ならラストシーンは、殺人事件の真相にしましたね。
その方が、爽やかに終えられたのではないかと思います。

調べてみると、何と!このススキノ探偵シリーズが、東映から今秋、「探偵はbarにいる」と言うタイトルで、映画化されるそうです。
こんな地味な作品が、映画に向くんでしょうか?
主人公のススキノ探偵に大泉洋、北大の助手でススキノ探偵の相棒に、松田龍平、謎の女に小雪、資産家役に西田敏行・・・あれ?この小説と、全然ストリーが違う!!

良く調べると、映画のタイトルは、探偵はbarにいるですが、原作はススキノ探偵シリーズのこの次の作品、「バーにかかってきた電話」なんです。
ややこしい!!

実は、この作品が面白かったんで、「バーにかかってきた電話」も読了しています。
近日、blogにアップ予定です。

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