検察者 / 小杉健治
このブログ初の書評になります。
話は変わりますが、自分はレストランでメニューを決めるときは、メニューに意外な食材の組み合わせとか、この料理の美味さが想像つかないとか、そう言うのをむしろチョイスします。
これは、良い方に当たれば、自分が体験した事のない、新しい味の発見となります。
さて、この本ですが、1992年の作品と、今から19年も前の作品なんですね。
まあ自分、この本を読んだのは今週だったんで、ご容赦と言う事で(笑)。
鷲尾塾と言う、企業の幹部候補生の研修をする団体があり、経営を学ばせる一方、鉄拳制裁も辞さない体育会系な面もあった。
塾の研修の仕上げとして、雲取山の登山があり、その際に研修生の反抗的な1人が体調を悪くし、途中下山して近くの病院に入院し、様態が悪化して死亡する。
反抗的だったがために、教官からしごきを受けたフシがあり、警察は検察に送致するが、桐生検事の先輩担当検事は不起訴としてしまう。
鷲尾塾は、政治家とのつながりがあり、検察に圧力がかかっていた。
検察審議会は、この事件を調査する。
一方桐生検事は、敏腕な河原崎警部と共に、殺人事件の担当をし、捜査の結果送致されて来た容疑者について、証拠が揃っているのに不自然さがあり、腑に落ちない。
起訴にたりるだけの証拠があったので起訴したが、被告の妻に、本来は敵であるはずの、敏腕弁護士の水木に依頼するよう、アドバイスする。
依頼を受けた水木弁護士も、事件に不自然さを感じ、独自に調査をする。そして、被告が罪を認めているにも関わらず、無罪を主張して、裁判を戦う。
昨年、本とかCDを大量に買ったのですが、この本は恐らくその際、別の本の捜し物をしていて、偶然発見して買ったんだと思います。
直木賞作者の小杉健治の作品は、初めて読みます。
買おうと思ったきっかけは、もう忘れてしまいましたが、恐らく検察審査会が登場したと言う事だと思います。
検察審査会とは、11人の無作為に選ばれた市民が、検察が下した判決を吟味し、起訴、不起訴が妥当か判断し、検察に勧告する機関です。
ポイントは、あくまで勧告すると言う事で、勧告を聞くかどうかは、検察の判断によります。
つまり、法的強制力はありません。
そんな検察審査会を登場させて、果たしてミステリーとして、成立するのか?想像が付かないので、むしろ買って読んでみました。
つまり、冒頭のレストランの話は、自分にとって、小説を買う時にも活きている原則なんですね。
小説は、主人公がぐいぐい引っ張って行くのが、分かりやすいです。その主人公が魅力的だと、小説は面白くなります。
この小説の主人公は、誰でしょう?
あえて言うなら、桐生検事、または検察審議会の有藤和樹、湯川珠美・・・
鷲尾塾の事件と、殺人事件と時系列に、同時並行にストーリーが進んで行きます。
主人公が、ぐいぐいストーリーを引っ張って行くのとは違います。
社会に主人公が不要なように、恐らく、この小説に主人公は不要でしょう。
桐生検事、または検察審議会の有藤、湯川も、小説の冒頭から出ているに過ぎず、敢えて言うなら、事件が主人公なのだと思います。
検察審議会か主なのかと思いきや、この小説の1つのパーツに過ぎません。
しかし、検察審議会が、この小説で果たす役割は大きいです。
鷲尾塾のしごき事件の行方は?殺人事件は、果たして冤罪なのか?
ストーリーにリアリティがあり、かつサスペンスがあり、読み応えがあり、大変面白いです。
難点と言う程ではありませんが、あえて気になった点は、殺人事件の動機が、もう少しシンプルで、スッキリしなかったか?って事と、もっと検察審議会をフューチャーした作品にならなかったか?と言う点。
しかし、それはこの小説の面白さを、損なうまでのものではありません。
後で調べて知ったのですが、小杉健治の作品では、桐生検事も、水木弁護士も、他の作品にも登場する、主役級の人物なんですね。
特に水木弁護士は、小杉健治の処女作に登場します。
しかも、その2人をサラッと使っているあたり、実は贅沢な作品なんだろうと思います。
小杉健治のファンなら、桐生検事も、水木弁護士も、登場したところで待ってました!!って感じなんでしょうね。
この作品が面白かったんで、他作品も読んで見たいと思っています。
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