Music.Boz Scaggs

2015年4月 2日 (木)

Then She Walked Away / Boz Scaggs

久々の音楽ネタです。
以前も書いていますが、自サイトの音楽ネタは、1日単位ではアクセスが多くはありませんが、毎日コンスタントにアクセス数を稼ぎ、1万アクセス以上の記事がいくつもあります。
面白い事に、軽く音楽の感想を書いているのは、あまりアクセスが来ないのですが、難しい事を書いている記事ほどアクセスが多いです。
最初このコーナーでは、一般の方は読めないでしょうから、譜面を載せないつもりでした。
しかし結局、譜面を載せた記事なんかも、凄くアクセスが多いです。

で、またまた譜面を載せた記事です。

ボズ・スキャッグスは、若い人は知らないかも知れませんね。
古い曲で申し訳ありません。

BABYMETALとか、コピーするの大変(間奏のソロはとてもあんなに速く弾けない!)ですしね(笑)。
BABYMETALも、その内取り上げたいですが・・・


ボズ・スキャッグスについて

ボズ・スキャッグスは、1960年代半ばから活動するシンガーで、1970年代半ばから1980年代初めにアダルトコンテンポラリー路線でヒットした、アダルトコンテンポラリーを代表する1人です。
アダルトコンテンポラリーは、1970年代後半に、アメリカでAOR(Adult-Oriented Rockの略?各種説あり)と呼ばれ、言葉が日本にも輸入され、アメリカではAORという言葉は流行りませんでしたが、日本では未だにAORの方がポピュラーじゃないでしょうか?
ボズ・スキャッグスはアメリカで今でも人気はあるようですが、日本の方がより人気があると言われています。

ボズ・スキャッグスは当初、ヒットに恵まれませんでしたが、1976年にアース・ウインド・アンド・ファイアーのプロデューサーとしても名を上げたジョー・ウィザートをプロデューサーに迎え、アダルトコンテンポラリー路線のアルバム「Silk Degrees」を出します。
このアルバムは、Billboardで最高2位となり、シングルカットの「Lowdown」はグラミー賞において最優秀R&B楽曲賞を受賞しました。
他にも、「Jump Street」、「Lido Shuffle」、「What Can I Say」、「Harbor Lights」、「We're All Alone」等、いずれ引けを取らない名曲揃いで、多くのミュージシャンにカバーされました。
このアルバムにバックとして参加した、ドラムのジェフ・ポーカロ、キーボードのデヴィッド・ペイチ、ベースのデヴィッド・ハンゲイトはグループ「TOTO(便器ではありませんw)」を結成し、翌年ファーストアルバムを発表し、こちらもアダルトコンテンポラリー路線の銘盤と言われています。

次のアルバム「Down Two Then Left」は、「Silk Degrees」に続くアダルトコンテンポラリー路線のアルバムで、プロデューサーは同じくジョー・ウィザート。
Billboardで最高11位となり、「Silk Degrees」よりロック色が強いアルバムで、「Silk Degrees」が好きな人は、このアルバムに少しがっかりしたようです。

次の「Middle Man」は多くのバックミュージシャンが「TOTO」メンバーで、プロデューサーは同じくジョー・ウィザート。
サウンドも「TOTO」色が強いですが、「Silk Degrees」を発展させたような路線のアルバムなので、ボズ・スキャッグスファンには好意的に捉えられていました。
Billboardで最高8位となり、シングルとしても「Breakdown Dead Ahead」、「Jojo」がヒットしました。
日本のCMで、「You Can Have Me Anytime」のギターソロ(ギタリストはカルロス・サンタナ)部分が使われ、有名になりました。

自分も当時、上記のような評価でしたが、1990年代に聞き返すと、「Down Two Then Left」もこれはこれで良いアルバムだと思いましたね。
このアルバムの評価の低さは、Billboard順位がこの3枚で最も低い事、「Silk Degrees」から路線を少し変えた事による反発の2つの要因のように思います。

若い人の中には、AORって何やねんと思うかも知れませんね。
一般論としての代表的ミュージシャンは、スティーリー・ダン(ドナルド・フェイゲン)、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、TOTO、一時期のシカゴ、クリストファー・クロス、ジェイ・グレイドン、デビット・フォスター等。
音楽スタイルとしては、シンプルでパワーやスリリングなロックとは異なる、オシャレに正装した男女が、酒を飲みながら楽しめるオシャレなロックですね。
ミュージシャンは、ジャズも出来るミュージシャン、アレンジャー、プロデューサーが、ジャズのロック的アプローチのフュージョンブームを通って、AORのサウンドが出来ました。



ジェイ・グレイドンについて

自分はボズ・スキャッグスの曲も好きなのですが、今回のテーマは間奏のギターソロを弾いているジェイ・グレイドンの名演です。
以前、スティーリー・ダンのペグでギターソロを弾いたエピソードを紹介しました。
ジェイ・グレイドンについてそのうち紹介すると書きましたが、4年越しの記事です・・・って、もう覚えている人はいないでしょうけどね(苦笑)。

ジェイ・グレイドンは、1970年代後半から1980年代あたりに活躍した、セッション・ギタリストにして名プロデューサーです。

セッション・ギタリストとしては前述のスティーリー・ダンを始めとして、ジノ・ヴァネリ、バーバラ・ストライサンド、ドリー・パートン、ダイアナ・ロス、ジャクソン・ファイブ、アリス・クーパー、チープトリック、アル・ジャロウ、クリストファー・クロス、レイ・チャールズ、シェール、ジョー・コッカー、マービン・ゲイ、ホール・アンド・オーツ、ウェイン・ショーター、オリビア・ニュートン・ジョン、アルバート・キング等、多数のアルバムでギターを弾きました。

作曲者として、1980年アース・ウインド・アンド・ファイアー「After Love Has Gone」(共同制作者デビッド・フォスター、ビル・チャンプリン)で「Best Rhythm & Blues Song」と「Song of the Year」の2冠。
1983年ジョージ・ベンソン「Turn Your Love Around」(共同制作者スティーブ・ルカサー、ビル・チャンプリン)で、グラミー賞ノミネート。

アレンジャーとして、マンハッタン・トランスファー「TWILIGHT ZONE」でグラミー賞「Best Arrangement for Voices」を受賞(共同受賞アラン・ポール)。

音楽プロデューサーとしては、1982年アル・ジャロウ「Breakin' Away」でグラミー賞「Album of the Year」を受賞。
1984年アル・ジャロウ「Jarreau」でグラミー賞「Producer of the Year (Non-Classical)」、「Best Engineered Recording - Non-Classical」を受賞。
同アルバムから、「Mornin'」がグラミー賞「Best Instrumental Arrangement Accompanying Vocal(s) を受賞(共同受賞デビッド・フォスター、ジェレミー・ルボック)。
1985年映画「ゴーストバスターズ」の「Ghostbusters Soundtrack」で、グラミー賞「Best Album of Original Score Written for a Motion Picture or a Television Special」を受賞。
1986年映画「セント・エルモス・ファイアー」の「St. Elmo's Fire Soundtrack」で、グラミー賞「Best Album of Original Score Written for a Motion Picture or a Television Special」を受賞。

1980年から1986年まで7年連続ノミネートで、内6年に受賞するという凄さです。

ちょうどフュージョンブームから、AORが当たった頃にAORサウンドのプロデューサーとして活躍しました。
自分らの年代では、バンド仲間の大多数が、ハードロック、その後流行したヘビーメタルを演奏していまして、自分のようにフュージョンやAORが好きと言うのは少数派でしたね。
ジェイ・グレイドンがプロデュースすると、明らかにAORのサウンドになっちゃいましたが、いつまでも流行が続く訳もなく、AORの衰退と共に表舞台から姿を消しました。

ミュージシャンでも、リスナーでも、プロデューサーとしてのジェイ・グレイドンを評価する人はそれなりにいるでしょうが、ギタリストとしてのジェイ・グレイドンって、あまりスポットが当たっていないんじゃないですかね?
1994年、盟友のデビット・フォスターの日本のコンサートで、特別ゲストとして登場し、Aireplayの名曲、「Nothin' You Can Do About It」のギターを弾きました。
ギターソロは、アルバム「Airplay」と同じでしたので、ギターソロはアドリブではなく、作曲して毎回同じフレーズを弾いているのではないかと思います。
1993年、ソロアルバム、「Airplay for the Planet」が日本で売れて、1995年ジェイ・グレイドン・オール・スターズで来日した時も、ジェイ・グレイドンのギターソロは、やはりアドリブじゃなくアルバムのものと同じでした。

アドリブをしないから、ギターソロの値打ちが下がる訳ではありません。
下手なアドリブをするくらいなら、むしろ練りこまれたギターソロの方が良いくらいです。
もちろん、一流ギタリストのアドリブは凄いですけどね。

ジェイ・グレイドンの名演と言うと、マーク・ジョーダンの「I'm a Camera」のソロも名演ですが、「Then She Walked Away」はかつて自分が演奏したことがあり、かつその際にアドリブ参考のため、ギターの完コピした事がありました。
小節数も少ないし、譜面化するなら楽だな・・・と。
今はかつてのように弾けませんし、もうコピーしたのも忘れてましたが、体が半分くらいはフレーズを覚えていて、小1時間くらいで譜面化出来ました。
むしろ、譜面作成ソフトの操作に手間取ったので、スムーズに行けば30分かからなかったでしょう。



Then She Walked Awayについて

さて、曲に行きましょう。

曲はボズ・スキャッグスとマイケル・オマーティアン共同制作。
アレンジは、このアルバム全体マイケル・オマーティアン。
バックのミュージシャンは、以下の通りです。

ドラム: ジェフ・ポーカロ
キーボード全般: マイケル・オマーティアン
ベース: スコット・エドワーズ
バッキングギター: 不明(ボズ・スキャッグス、ステーブ・ルカサー、レイ・パーカー・ジュニアのいずれか)
ギターソロ: ジェイ・グレイドン

ラッパ隊は、クレジットには多数書かれていますが、全員が参加したとも思えず。
具体的に、誰がこの曲で演奏したか不明です。

曲のテンポは、テンポ95(1分間に四分音符95回)くらい?
自分の経験では、テンポ90-110あたりのテンポの曲が、雰囲気を出すのが難しいですね。
演奏力の差が出やすいです。

メロディは、G調ですので、音階はG-A-B-C-D-E-F#となります。

曲の構成は、「AABC」
と書いても分かりにくいでしょうから、歌詞と共に説明しますと。

[A]
Then she walked away
Quietly so afraid
Smiling but no doubt
Crying her heart out
She really just wants to stay

[A]
Then she walked away
Leading her own parade
Nobody's cheering
The voices she's hearing
Are empty remarks she made

[B]
How was she to know
That it would come to this
Sorry Miss
They forgot to tell you it was just a game
Just a sad illusion

[C]
Now you're on your own
Really on your own
It's still a long way home

Aのラストの仕掛けが乙ですね。
そしてAからBのベースラインの静と動の切り替えが素敵です。

バッキング・ギターが誰なのか分かりませんが、残念ながらフレーズが凡庸です。
もしかするとボズ・スキャッグス?それとも、ステーブ・ルカサーの可能性もあります。
名人ステーブ・ルカサーもたまに、曲を理解していないイマイチなバッキングがありますしね。

Then She Walked Awayのギターソロについて

2:33からがギターソロになります。
8小節(最後の音も加えると9小節)と短いながら、メリハリが利いた、練りこまれた良いソロだと思います。



ギターソロ全体について

まずは、譜面全体を俯瞰(ふかん)的に見て下さい。

他の楽器のコード(和音)は拾っていませんが、コード進行はサビ(曲構成のC)と同じと考えて良いでしょう。
アレンジは、サビとは異なりますけどね。

フレーズは、Gメジャースケール一本です。
スケールとは音階の事で、Gメジャースケールとは、Gから始まるメジャースケールと言うタイプの音階の事です。
メジャーコード(コード=和音)に合わせる音階です。
スケールとコードは、表裏一体です。

音階を表す時、C=ド、D=レ、E=ミ、F=ファ、G=ソ、A=ラ、B=シ(クラッシックではH)。

Gのメジャーコード、GまたはG△(他にもGM、Gmaj)の和音はⅠ-Ⅲ-Ⅴ、G-B-D。
メジャースケールの音階のタイプは、Ⅰ-Ⅱ-Ⅲ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅵ-Ⅶ。
音の間隔は、Ⅰ(1音)Ⅱ(1音)Ⅲ(半音)Ⅳ(1音)Ⅴ(1音)Ⅵ(1音)Ⅶ(半音)となります。

構成音は、G-A-B-C-D-E-F#となり曲メロと同じ・・・曲メロのキーがGなら、Gメジャースケールと曲メロは同じ音階になります。
G調の場合、ロックだとGメジャースケール(またはメジャーペンタトニックスケール)、Gブルースペンタトニックスケールだけでプレイ出来ます。
その内のGメジャースケール・・・と言う事ですね。

スケールチェンジをして、ジャジーなアプローチも可能だったでしょうが、ロック色のあるフレージング、ギターの音なので、シンプルにGメジャースケール一本で合うと思います。
何よりこのギターの音、ジェイ・グレイドンらしいです。

この辺ですでに、付いて行けない人多数でしょうね(苦笑)。

比較的、1拍目、2拍目にフレーズを弾いて、3拍目、4拍目は伸ばすフレーズが目に付きます。
これは、ソロのメロディの良い間になっていますし、音が伸びるところが気持ち良くもあります。

ギターに限らず、各楽器のソロですが、若さに任せ、火が付いたように弾く人が良くいますが、はっきり行ってアホです。
他人の自慰なんて、見たい人はいません。
楽器のソロは、あたかも物語のようであり、起承転結の展開がしっかりしていなくてはなりません。
体力勝負で、やたら速弾き決めても、何の意味もありません。

音楽には間が必要で、もしも間がないのなら、リスナーは音を追えず、演奏への意識が流れてしまうでしょう。
もっと言うと、起承転結もそうですが、一流ミュージシャンは間が絶妙で、間に各ミュージシャン独特のものがあります。
間の出来が、各ミュージシャンの楽器のソロの出来不出来を左右すると言っても、過言ではありません。

音楽は、観客との音を媒介したSEXであるべきです。
そしてじらしたり、予想を裏切ったり、ここぞと言う時に一気に攻め立て、いかに客を満足させるか・・・

小節の後半2拍を伸ばすのは、ジェイ・グレイドンのギターソロ全般に特徴のある、間のような気がします。
前述の「I'm a Camera」のソロも、比較的3拍、4拍を伸ばすフレーズが目立ちますね。



1小節目(2:33~2:35)

ソロ出だしの下がるスラー(スライド)ですが、あまりこんな風に使う人は、ジェイ・グレイドン以外にはいないんじゃないですかね?
自分はこの曲の影響で、このフレーズは良く使わせてもらいました。


2小節目(2:36~2:38)

1拍目のハイAの音から2拍目のダブルハイF#へと音を飛ばすのも、ジェイ・グレイドンのギターソロの特徴ですね。
こう言うフレーズは、弟子とも言うべき、ステーブ・ルカサーも使います。
アルバム「TOTO」の「You are the flower」で、ジェイ・グレイドンの影響を受けたギターソロを聞く事が出来ます。
自分も、この辺の音が飛ぶフレーズは影響を受け、ギターソロで良く使いました。


3小節目-4小節目(2:39~2:43)

1、2小節目の3拍目、4拍目は、伸ばすフレーズだったのが、裏をかいてここでは4拍目に16分音符の速引きが入り、次の小節まで速弾きが続きます。
4小節目は、予定調和的に3拍目、4拍目は伸ばすフレーズ。
この辺の、フレーズコントラストの使い方が良いですね。


5小節目(2:44~2:46)

この小節から最後まで、は、8va・・・演奏しているのは、譜面表記のオクターブ上の音となります。
ソロ後半ですが、前の小節の16分音符のフレーズを受け、ダブルハイGとAの16分音符のチョーキング(弦を指で引っ張って音程を変える)から、2拍目突然ハイBまで音が飛び、雪崩のようにハイG、ハイDと音が飛んで、B、ハイDと続く音を飛ばすフレーズも、2小節目同様、ジェイ・グレイドンの特徴です。
4拍目で、いったん音を下げて上げるグリッサンドがありますが、この譜面ソフトでは書き切れないので、単にグリッサンドとしています。


6小節目(2:47~2:49)

ハイA、ダブルハイD、ダブルハイFの音飛びフレーズで、かつ2拍3連符です。
ここで、3連符を使うのはオシャレですね。
この辺の意表をつく使い方も、自分は影響を受けています。
有名ギタリストのフレーズを聞くと、意表を付いた3連符使いが、けっこうあるような気がします。


7小節目(2:50~2:52)

この辺から、フレージングが、ギターソロの解決(起承転結で言うところの結)に入ります。
1拍目の最後なんて音は飛びますが、この辺はギター的なフレーズで、音飛びとは言いませんね。
予定調和的に3拍目、4拍目は伸ばすフレーズです。


8小節目(2:53~2:55)

前の小節のフレーズを1音ずらして弾き、3拍目、4拍目に16分音符を弾いてたたみ込みます。
3拍目の頭は、例によって音を飛ばしています。


9小節目(2:56~2:58)

出だしの音と、オクターブ上の同じ音(ダブルハイF#)で解決しました。
お見事、とも言うべき終わり方です。

この後、歌の合いの手のようにボリューム奏法を使ったフレーズも弾きますが、そっちは簡単なフレーズなので割愛します。


ジェイ・グレイドンは、あたかもアドリブかのように弾いていますが、良く分析するとフレーズが練られていて、フレーズを作曲したっぽいですよね。
個々のパーツが良く出来ていますので、ギターソロのアイデアの宝庫だと思います。
もしジェイ・グレイドンのギターソロが気に入ったら、他にも色々と聞いてみると良いでしょう。
個々のフレーズのパーツ、アイデアは今でも錆びずに、利用可能だと思います。

「TOTO」の「You are the flower」は、興味深いギターソロですので、その内取り上げます。

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Then She Walked Away by Boz Scaggs on Grooveshark

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