Music.Max Middleton

2011年9月30日 (金)

Led Boots / Hiromi's Sonicbloom

予め断っておきますが、今回はいつにも増して、音楽用語たっぷり、しかもギター、キーボード、ベース、ドラムについて、掘り下げて語り、難易度高いかもです。
ご注意を。

Led Bootsと言うと、ギターの神様、ジェフ・ベックのロック・インストロメンタルの名曲と言うイメージが強いでしょうが、作曲者はローズ・ピアノの名手、マックス・ミドルトンです。
当時、ジェフ・ベックのアルバム「ワイアード」にキーボーディスととして参加していたマックス・ミドルトンが、ジェフ・ベックに曲を提供したのです。

原曲は、当時マックス・ミドルトンが所属していたロックバンド、ハミングバードの1979年のアルバム「ダイアモンド・ナイツ」に収録されている「Got My "Led Boots" On」です。

ジェフ・ベック・グループがアルバムを出して、ツアーが終わって、事実上の解散状態となっていたために、ジェフ・ベック・グループのメンバー、キーボードのマックス・ミドルトン、ベースのクライヴ・チャーマン、ボーカルのボブ・テンチが中心になって、1972年に別途結成したのがハミングバードです。
ダイアモンド・ナイツの際のメンバーは、以下の通りです。

Bobby Tench - guitar, vocals
Bernie Holland - guitar
Clive Chaman - bass
Max Middleton - keyboards
Conrad Isidore - drums

以前紹介した、リンダ・ルイスの「I do my best of impress」とキーボード、ベースは一緒です。

余談ですが、2007年秋に、ハミングバードが、紙ジャケで初CD化されました。
自分は知っていましたが、のんびり構えていて、2007年の年末に注文しようとしたらビックリ!?3枚のアルバムとも、売り切れでした。
調べると、何と3枚とも、発売後1週間くらいで売り切れたんだそうです(涙)。

もしもジェフ・ベックの「Led Boots」を知っていて、この曲を初めて聴く人は、ビックリでしょうね。
ボーカルが入った曲なんです。

さて曲に行きましょう。
全般的にFunkyでカッコ良い曲ですね。
雄大なホーンセクションのフレーズに、スラップ奏法のベースのオブリガード(助奏)が素敵ですね。
この曲全般に、ホーンセクションのフレーズは好きです。

マックス・ミドルトンは、この曲では、ローズ・ピアノではなく、クラビネットと言うピアノの元となった鍵盤楽器を弾いています。
クラビネットは、コードを刻むフレーズが多いですが、この曲でもセオリー通り、細かくコードを刻んでいます。
ジェフ・ベックの「Led Boots」でもお馴染のリフをクラビネットとギター、一部ユニゾンでベースが弾いています。
クライヴ・チャーマンのフレーズは、リフ→スラップ奏法と言う感じで、カッコ良いですね。
ちょっとシャウトな声の、ボビー・テンチの歌声も良いです。
ギターは・・・ギターの神様と比べると、見劣りしちゃいますが・・・アタリマエカ。

学生バンド時代に、バンドのメンバーに、今度「Led Boots」やるよと言ったら、ベーシストが、「それってどんな曲?」
自分「♪赤い靴履いてた、女の子~」
ベーシスト「そうなんだ。」
自分「・・・」
そこ突っ込むとこだろ、ふつー!それに「Red Boots」じゃないし(苦笑)。

ジェフ・ベックの経歴は、こちらを見て頂きましょう。
ロック史上に大きな足跡を残すエリック・クラプトンジェフ・ベックジミー・ペイジの3人のギタリストを日本では、3大ギタリストと呼んでいますね。

1960年代から、エリック・クラプトンクリームデレク・アンド・ザ・ドミノス、またソロ活動で、ジミー・ペイジレッド・ツェッペリンで商業的成功を収めていましたが、ジェフ・ベックだけは、それほど売れていませんでした。
ジェフ・ベックが大きな成功を収めるのは、1975年のソロアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」からで、当時流行の兆しを見せていたフュージョン(当初クロスオーバーと呼ばれていた)を先取りしたアルバムでした。
1976年「ワイアード」、1980年「ゼア・アンド・バック」と、独特のジェフ・ベックのサウンドを展開します。

ジェフ・ベックのバックを務めるミュージシャンは、昔から現在まで超一流ばかりで、そんなミュージシャン達が、テクニックを前面に出し、ロック色の強いフュージョンのインストゥルメンタルを演奏しました。
ジェフ・ベックのライブで、新アルバムの曲以外は、この3枚のアルバムからの選曲が多いです。

「Led Boots」は、「ワイアード」の1曲目で、高校時代ドラムを叩いていた自分は、この曲を聴いてぶっ飛びました。
めちゃくちゃカッコ良い反面、どんな風に叩いているのか、さっぱり分かりませんでした。

ドラマーは、ジャズ/フュージョン系の有名ドラマー、後に大ブロデューサーとして幾多のヒット曲を手掛けるナラダ・マイケル・ウォルデン
自分なりに、この曲のドラムをコピーしましたが、恐らく完成度は70%くらいだったと思います。
この曲のドラミングは、ドラム教室の先生でさえ、コピーするのは無理・・・とか公言してますからね(笑)。

ジェフ・ベックのバックを務める幾多の有名ドラマー達も、この曲を演奏しましたが、ほとんどがイマイチで聞くに堪えませんでした。
唯一、ナラダ・マイケル・ウォルデンに次いで凄いなぁと思ったのは、自分的に現在世界一のドラマーと思っている、ヴィニー・カリウタくらいです。

もし興味があるなら、ナラダ・マイケル・ウォルデンが叩く原曲も聞いてみて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=JqV97z0tzus

この曲はもう一つ、7/8拍子と言う変拍子が入っています。
下のYouTubeで、1:13からのリフがそうです。

ドラムは、テーマリフは超難曲なんですが、この7/8拍子は難しくなく、2小節つなげて7/4拍子みたいにして叩きます。
むしろ演奏するギター、ベース、キーボードは、2番目(偶数小節目)の演奏の際に、シンバルの裏の拍子に入るよう演奏しますので、めちゃくちゃリズムが取りにくいです。
良くスタジオで、余興にこの曲をやってましたが、この7/8拍子が合わなくて、普通に4/4拍子で演奏してみたら、何とも締まらない、間抜けなフレーズになりました。
7/8拍子には、ちゃんと意味があったんですね。

さて、肝心のジェフ・ベックのギターについて、語らねばなりませんね。
エリック・クラプトンジミー・ペイジの現在の演奏は、年と共に衰えたなぁと言う感じですが、ジェフ・ベックのギターは、老いてますます盛ん・・・と言う感じです。

ジェフ・ベックは、速弾きもしますが、そんなのをウリにはしていません。
元々ギターの表現力が素晴らしく、「ブロウ・バイ・ブロウ」、「ワイアード」、「ゼア・アンド・バック」なんかで弾いているフレーズで、音符上コピーするのは造作ないのですが、この音のニュアンスは、どうやって音出してるんだろうな?って言う謎のフレーズがいくつもありました。
ここまでは、ピック弾きだったのですが、この後指弾きになり、早弾きが減った半面、指の微妙なニュアンスの演奏が、以前にも増して表現力の幅を広げました。

特に、ストラトキャスターシンクロナイズド・トレモロ・ユニットで細かく音程を変化させて演奏するのは、まさに神ですね。
自分は、ここまで素晴らしいシンクロナイズド・トレモロ・ユニットの使い手は、現役ギタリストでは知りません。
これに指弾きの微妙なタッチ(爪を使うとか指の腹を使う/ポンと弾くとかこするように弾く)、音の強弱で、現在の演奏は、どんな風に弾いているのか、皆目見当もつかないフレーズのオンパレードです。

ギタリストのCharが、ジェフ・ベックの自宅に遊びに行った時、そばで弾いているのを見ても、どうやって弾いてあの音を出しているのか分からなかったと、言っているくらいです。

そして、アドリブ演奏のフレーズの素晴らしさ!
通常、アドリブ演奏は、こんな風な展開で弾こうと言うのは、予め決めますので、元曲のフレーズのニュアンスは残ります。
ジェフ・ベックのアドリブは、アドリブに入った途端、何の曲?ってぐらい元曲のフレーズのニュアンスは微塵もありません。
まさに、感情のまま演奏しているのです。
これって、プロですらこんなアドリブをすると、グダグダ演奏に陥りやすいです。

さて曲に行きましょう。
まあ、ポイントは上で語ってしまってますけどね(笑)。
この映像は、「ライヴ・ベック3」からですね。メンバーは下記の通りです。

Jeff Beck - guitar
Jason Rebello - keyboads
Tal Wilkenfeld - bass
Vinnie Colaiuta - drums

ベースのタル・ウィルケンフェルド、可愛い♪・・・って言うのは置いておいて(笑)

ヴィニー・カリウタの超絶に手数の多い、複雑なドラムソロから、テーマリフに入りますが、ヴィニー・カリウタにしては珍しく、1回目のリフのフィルイン(ドラムをドコドコ叩くヤツですねw)で、頭真っ白になっちゃったみたいですね(笑)。
すぐにジェフ・ベックが気が付いて、プッと吹いて、次のフレーズの時に、問題ないよと、親指をあげて見せます。
ジェフ・ベックは、バックの演奏が気に入らないと、コンサートの途中で帰っちゃった事もあるのですが、年と共に丸くなったんですかね。
ヴィニー・カリウタは神経質な性格なのか、このミスのダメージを、3回目のリフくらいまで感じます。その後は落ち着きましたが。

ヴィニー・カリウタは、ナラダ・マイケル・ウォルデンの演奏とは違い、スネアドラムとシンバル、細かいバスドラムで、上手にテーマリフを叩いています。
テーマメロに入ると、ドラムのフレーズを少しシンプルにします。

テーマメロは、ギターとシンセがハミングします。
ジェイソン・リベロって、ジェフ・ベックとの共演しか、映像で見た事がないのですが、いつも楽しそうに笑顔で演奏していて良いですね。
良く、キーボーディストから、ジェイソン・リベロのシンセの音を、ヤン・ハマー(「ワイアード」のレコーディングの際のキーボーディスト)の、音を真似するな!って書かれているのを見受けます。
この場面のシンセの音色は、このギターっぽい音色・・・ヤン・ハマーみたいな音色が一番合うと思います。
そんな事言ったら、ジェイソン・リベロが可哀想ですよ。

この曲のギターソロは、アドリブでやろうとすると、実は簡単そうで難しいんです。
テーマリフの上で、アドリブするので、1コード上のアドリブで、これってかえってやりにくいんですね。
それに、フレーズが単調になり易いんです。

ギターの神様は、どうしたかと言うと、これぞ神様の本領発揮!
ブルース・ペンタトニック(音階の名称です)のほぼ1本と言う、シンプルなフレージングなのに、まるでギター界のサルバドール・ダリとか、パブロ・ピカソみたいに、メロディがあってないよう、解釈の難しいフレーズを奏でます。
これって、「ブロウ・バイ・ブロウ」の当初から賛否両論だったんですが、これが神様のフレーズの味って事で、現在このフレージングに文句をつける人は、いないんじゃないですかね?

指引きならではの、細かいギターの音の表情、音の強弱、シンクロナイズド・トレモロ・ユニットの繊細な使い方を聞き逃さないで下さい。
ジェフ・ベックの演奏の音符を拾う事は、造作ありませんが、奏でる音まで正確に再現となると、1/3かそれ以上の音は、どうやって出しているのか、見当もつきません。さすが神様!
自分はこのジェフ・ベックのギターの音を聴くと、ギターがまるで生を受け、活きる喜びを叫んでいるように聞こえます。

ちなみに、自分はスタジオの余興で、この曲をツーファイブ(コード進行の名称です)解釈でアドリブしたところ、こんなジャズなフレーズは、ジェフ・ベックの曲じゃないみたいと言われました(笑)。

ヴィニー・カリウタは、さすがです!ギターソロでは、ドラムを押さえた、シンプルな演奏で、ギターソロを守り立てています。
超絶テクニックがありつつ、こんな細かい心使いが出来るので、あまたの一流ミュージシャンに、信頼されているんですね。

ジェイソン・リベロの、ジェフ・ベック並に、難しい歌わせ方のシンセソロで、エンディングとなります。

ジェフ・ベックは、2010年の途中からのツアーメンバーのドラマーを、ナラダ・マイケル・ウォルデンにしました。
これって、凄いビックリですよね。日本で言ったら、つんく♂を単なるセッションギタリストとして、バックの伴奏させると言う事に等しいのです。
つんく♂が、セッションギタリストとして、使い物になるかは、別にして(笑)。

やはり、ナラダ・マイケル・ウォルデンの叩く「Led Boots」は最高です。
絶妙のハイハット(シンバル)ワーク、スネアドラムの入れ方や、ツーバス(バスドラムが2つ)ならではの、細かいバスドラフレーズ、適度に入るフィルイン(ドラムをドコドコ叩くヤツですねw)等々。
ヴィニー・カリウタのフレーズでも、これはこれで良いと思っていましたが、こと「Led Boots」のドラミングに関しては、世界一のドラマーも、ナラダ・マイケル・ウォルデンには敵いません。
逆な言い方をすると、ドラマーにとって、それほど難曲なのです。

映像は、日本でのコンサートで、メンバーは以下の通りです。

Jeff Beck - guitar
Jason Rebello - keyboads
Rhonda Smith - bass
Narada Michael Walden - drums

映像では出ていませんが、キーボードは前のと変わらずジェイソン・リベロです。
録音状態は悪いですが、ナラダ・マイケル・ウォルデンのドラミングを聴くだけなら、これでも十分かと。

元映像が消されましたので、別途同じ日の演奏を貼り付けます。6:28からがLed Bootsになります。

スタンリー・クラークのところで、上原ひろみさんの事を紹介していると思ったのですが、長くなるので、紹介を省いていましたね(笑)。
自分があれこれ書くより、こちらに上手にまとめられていますので、一読をオススメします。
16歳のまだプロじゃない時、かの神様のようなチック・コリアと共演したとか、バークリー音楽大学では、ピアノ科ではなく、作曲を学び、しかも首席で卒業したとか、凄まじい天才的エピソードですね。

日本人の平均的な、ミュージシャンのレベルは、世界的に見てもかなり高いと思うのですが、トップミュージシャンの頂点のレベルと比べると、見劣りしていました。
彼女こそ、日本人演奏家で、世界のトップミュージシャン中の、トップを取れる可能性のある逸材だと思います。

作曲を学んだと言うのも、彼女の進むべき道が、間違っていない事を裏付けています。
RADWIMPSのところでも書きましたが、「音楽にとって、テクニックは手段であって、表現する事こそが目的」、そしてそのためには良い曲が必要なのです。
良い曲は、人の曲を待っていても、いつ良い曲に出会えるか分かりません。
もしも作曲の才能があるならば、自分で作るに限ります。

でもこの曲は、彼女の作曲した曲ではありませんけどね。
しかし曲のアレンジの中心は、恐らく上原ひろみさんだと思います。

メンバーは、2007年のアルバム、「Time Control」の「Hiromi's Sonicbloom」のメンバーです。

Hiromi Uehara - piano,keyboads
David Fiuczynski - guitar
Tony Grey - bass
Martin Valihora - drums

すいませんが、自分はこのブログを書くまで、このメンバーの誰一人知りませんでした。
しかし演奏を聴く限り、彼らが一流である事は、疑いがないです。

ベースのトニー・グレイは、上原ひろみさんのバークリーの後輩だそうです。
ベースは、5弦ベースですね(通常は4弦)。
たまに、ゲロが出そうな素敵な重低音が響きますので、5弦目にローBの弦を張ってるのでしょうか?

ギターのデビッド・フュージンスキーのダブルネックギターですが、上のギターはフレットレス(フレットがない!)の12弦ギターと言う、変態な構成です。
特注ギター?

「Led Boots」は名曲だけに、あまたのロックミュージシャンが演奏していますが、ジェフ・ベックと同じアレンジで演奏しているので、ドラムがダメですし、ギターもジェフ・ベックっぽく弾いたところで、表現力が追いつかず、魅力を感じませんでした。
上原ひろみさんは、テーマだけもらって、8ビート(8分音符で2拍目と4拍目にアクセントをつけるリズム・・・普通のロックのリズムですねw)のリズムを採用しています。
ジャズミュージシャンらしい発想ですね。
これならば、ドラムは難曲ではありません。

このブログでは、あまりネガティブな事を発言しないルール(勝手な自分ルールw)のつもりでしたたが、実は上原ひろみさんの演奏に、半分ダメ出しするつもりで、取り上げました。

イントロとエンディングのシンセ音ですが、クラビアのNord Lead、バーチャル・アナログ・シンセサイザーを使っていますね。
上原ひろみさんのテーマは、機械的に聞こえるが、音程があるかないか分からない、ギリギリの音・・・と言うところじゃないかと推察します。
シンセ単体音としては、良い音なのですよ。でも、曲になると、良い音ですかね?

例えば、もっと金属感のある、歪んだ音色とか・・・ご自分で作った音なのか、プロのシンセプログラマー(それともマニュピレーター?)が作った音なのか、分かりませんが、シンセの音作りを間違えていると思います。
自分には、この音色が良いとは思えません。

クラビアのNord Piano・・・世界のあまたのミュージシャンが使っている、ピアノ系のシュミレート音では、デファクト・スタンダードと言っても良い機種です。
音色は、ローズ・ピアノ・・・これまでも、やまがたすみことか、スタンリー・クラークアレン・ヴィズィッティリンダ・ルイスなんかで、紹介していますね。
ソロに入って(1:42)、おお!!いい感じのローズ・ピアノのソロ・・・と思ったのもつかの間、9小節目(1:59)くらいから、横転してしまいました(笑)。

リンダ・ルイスでも書いていますが、オールド・ローズ・ピアノの名機は、ピアノ線が切れやすいので、あまり強く弾く事が出来ません。
弱々しいタッチで弾くので、雰囲気が気だるい感じとなり、それがこの楽器の味でもあります。

もうひとつ、強く弾いたり、和音では音が濁るという特徴もあり、ミュージシャンによって、音の濁りを嫌い、和音の音数を減らす人もいれば、逆に濁りを活かした演奏をする人もいます。

しかしローズ・ピアノのソロ9小節目(1:59)から、ただでさえ音色が濁り易いクローズドボイシング(和音配列の1種)の和音で、物凄いタッチの強さ・・・本物のオールド・ローズ・ピアノなら、とっくにピアノ線が切れているでしょうが、ピアノ音をシュミレートした機種なので、ぶっ叩いたってピアノ線は切れません。
この9小節目以降は、ピアノソロだったら良かったのですが、ローズ・ピアノのソロとしては駄演奏です。
ソロを取る時、なぜチョイスがローズ・ピアノ音色なのでしょうか?音色に合ったフレーズを弾くべきです。
ローズ・ピアノで、ピアノソロみたいなフレーズを弾くのなら、ローズ・ピアノの音色である必要を感じません。

もう一度、リンダ・ルイスの「I do my best of impress」ローズ・ピアノソロと聞き比べて下さい。
残念ながら、かなり劣ると言わざるを得ません。

師匠のチック・コリアとか、巨匠ハービー・ハンコックなんかは、ピアノ、ローズ・ピアノ、シンセどれにも名演があります。
上原ひろみさんだって、やれば出来るはずです。

それにしても、左手にピアノ、右手にクラビアのNord Pianoのユニゾン演奏(2:30)は、凄いですね。
しかもこれでアドリブで早弾きをする・・・この演奏、難易度高いのですよ。

そしてピアノソロ(3:45)・・・これは凄まじく良いですね。めちゃくちゃ神演奏です。
上原ひろみさんのピアノは、音の強弱のダイナミクスが凄い。圧倒される表現力です。
この曲では、特に一心不乱に弾いていて、フレーズに単調さはあるものの、パワーで持って行かれる・・・そんな感じです。

のだめカンタービレの野田恵も、その表現力に千秋真一がいつも舌を巻いていますが、ジャズとクラッシックの違いはあれど、このダイナミクスと表現力は、野田恵もかくあらんと思わせるものです。

それにしても、バックの安定した疾走感・・・聞いてて気持ち良いですね。
フレーズの変わり目のユニゾンが、またかっこ良いです。
突然ブレイクしてみたり・・・凝ったアレンジですね。プロでも練習大変だったでしょう。

ドラムのマーティン・ヴァリホラが、上原ひろみさんのピアノソロが盛り上がるところで、フレーズを変えて、盛り上がりを支援しているのを聞き逃さないで下さい。

ピアノソロが終わると、ユニゾン演奏→テーマリフのユニゾン演奏となり、これもかっこ良いアレンジですね。
これまたブレイクしたりと、凝ったアレンジです。

エンディングのデビッド・フュージンスキーのギターソロは・・・ごめんなさい!って出来です。
でも、この曲でソロを取る難しさは、伝わるのではないかと思います。

駄演奏なんて書いて、失礼しましたが、それを補って余りあるピアノソロは圧巻で、ジェフ・ベックの大ファンである自分は、興味深く聴かせてもらいました。
上原ひろみさんは、この難曲で、これだけセンスの良いアレンジなんで、これからも素晴しい曲を聞かせてくれるものと、確信しています。


Hiromi Uehara - Led Boots 投稿者 m_a_k_

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2011年9月15日 (木)

I do my best of impress / Linda Lewis

今回は、UKソウルの歌姫、リンダ・ルイスの曲を紹介しますが、本当のネライは、ローズ・ピアノの名演の紹介です。

リンダ・ルイスは、1950年ロンドン生まれ。
10代にビートルズの映画、「ヘルプ!」に端役で出演し、バンド活動、セッションボーカリストの後、1971年にソロボーカリストとしてデビュー。
常人の声域は、1.5オクターブもあれば、広い方ですが、リンダ・ルイスは5オクターブもの広い声域で、特に高音はヒバリのさえずりにも例えられるほどの美声です。
1971年「セイ・ノー・モア」、1972年「ラーク」、1973年「ファゾムス・ディープ」、1974年「ハート・ストリングス」は名盤と言われています。
この辺が、リンダ・ルイスの人気のピークで、徐々にアルバムの売れ行きも落ち、1980年代には活動を停止し、消息も分からなくなりました。

しかし1993年、突然、ジャミロクワイのファーストアルバム、「エマージェンシー・オン・プラネット・アース」にバックコーラスで参加すると、当時のアシッド・ジャズのブームやレア・グルーブブームから、1970年代の曲が良質のグルーブとして見直され、ロンドンやアメリカ、日本の多くのDJに取り上げられ、またサンプリングがラッパーに使われたりしました。
それがきっかけかどうか、1995年に、久々のソロアルバム「セカンド・ネイチャー」を出し復活、その後来日公演もしました。

この曲は、1975年の「Not A Little Girl Anymore」と言うアルバムに収録されている曲です。
アルバムジャケットは、米国版と英国版で異なります。

関係ないですが、このアルバムの「It's In His Kiss」、「Rock And Roller Coaster」に無名時代のルーサー・ヴァンドロス(故人/合掌)、「This Time I'll Be Sweeter」には同じくデニス・ウィリアムスが、バックコーラスで参加してます!?

冒頭にも述べましたが、この曲は大好きではありますが、リンダ・ルイスの5オクターブの音域を活かした曲だから、選んだのではありません。
ローズ・ピアノ(当時だとフェンダー・ローズ?)の名演だから選んだのです。
1980年代に、ベストアルバム(最初はコンピレーションだったかも)でこの曲を知り、その際には「Not A Little Girl Anymore」は入手困難。
これほどの名演ですが、初めて聞いて以来、永らく誰が演奏しているのか、謎でした。

Flute:Lenny Pickett
Congas:Darryl Lee Que
Bass:Clive Chaman
Drums, Percussion:Gerry Conway
Electric Piano, Synthesizer:Max Middleton
Guitar:Robert Ahwai

「Not A Little Girl Anymore」がCD再版され、判明した時にはビックリでした。
ローズ・ピアノの名演ではありますが、弾いていたのは、自分の大好きなローズ・ピアノの名人、マックス・ミドルトンだったとは!

マックス・ミドルトンは、1946年イギリスのアマシャム生まれ。1971年にキーボードとしてジェフ・ベック・グループ(日本では、第2期ジェフ・ベック・グループと呼ばれています)に参加し、名を上げます。
1974年には自らのバンド、ハミングバードを結成して、その後3枚のアルバムを出します。
セッションキーボーディスとしても、1975年に、ロックインストロメンタルの最高峰と言われた銘盤、ジェフ・ベックの「ブロウ・バイ・ブロウ」、「ワイアード」に参加し、ケイト・ブッシュ、クリス・レア、ナザレス、ストリートウォーカーズ、アレンピーコック等、多くの有名アーティストのアルバムに参加しました。
マックス・ミドルトンは、鍵盤楽器全般・・・ピアノ、クラビネットチェンバロ、シンセサイザーを弾きますが、中でも当時から、ローズ・ピアノの名人と言われていましたね。

ローズ・ピアノの先駆者で成功者と言う事もあり、当時からマックス・ミドルトンのフレーズの真似をする人が多く、実はこの曲も、「なんちゃってマックス・ミドルトン」が弾いているのかと思いました(笑)。

「Not A Little Girl Anymore」がCD再版されて知ったのですが、レコーディング会社をリプリーズからアリスタに移籍、それまで自分で曲を書いて歌っていたのが、このアルバムでは他の人が曲を書いたりしています。
名盤「ハート・ストリングス」の後のこのアルバムは、リリース当時駄作とされ、商業的にも失敗したのだそうです。
なんだか、こんな話をやまがたすみこのところでも書いたような・・・(笑)。
時代の流れも見据え、良い曲を書き続け、何年にもわたり商業的にも成功するのは、ほんのごく一部の人達です。

何が良いのかは時間が解決する事で、現在ではこのアルバムは再評価され、むしろリンダ・ルイスアルバムの中で、最も好きと言う人もいるほどです。
この文を書くに当たり、インターネットで調べると、この「I do my best of impress」を好きと言う人が多いのに、ビックリしますね。
ちなみに、ベースとギターは、ハミングバードのメンバーで、このアルバム制作に、マックス・ミドルトンが深く関わっていた事が、伺えます。

さて、曲に行きましょう。
出だしのチープなユニゾン(同じ音律での演奏)は、古臭くもあり、しかし普遍的にかわいいフレーズですね。

ノリの良い曲ですが、ベースの跳ねるようなリズム感が、この曲のリズムを素晴らしいものにしています。
ギターのロバート・アーワイのバッキングフレーズも、地味ながら、味わいのあるものです。
ギターは一部、オーバー・ダビング(音の重ね録り)していますね。

しかしこの曲では、何と言ってもマックス・ミドルトン。
以前にも書いていますが、オールド・ローズ・ピアノの名機は、ピアノ線が切れやすいので、あまり強く弾く事が出来ません。
弱々しいタッチで弾くので、雰囲気が気だるい感じとなり、それがこの楽器の味でもあります。

もうひとつ、強く弾いたり、和音では音が濁るという特徴もあり、ミュージシャンによって、音の濁りを嫌い、和音の音数を減らす人もいれば、逆に濁りを活かした演奏をする人もいます。
マックス・ミドルトンは、どちらかと言えば、前者のタイプですかね?

例えば、リンダ・ルイスの歌のローズ・ピアノのバッキングで、歌メロに絡むオブリガート(メロディに対する助奏)の妙。
時には白玉(2分音符以上の長く伸ばすフレーズ)、リズムを刻んでみたり、アルペジオ(分散和音)と縦横無尽ですね。
それでいて、フルートソロには、自身を目立たせず、フルートを活かすよう、リズムを刻みます。

エンディングのローズ・ピアノのソロは、まさに、お見事!!としか言いようにない、神演奏です。
フレーズを弾く時の、素晴らしいタッチの強弱を聞き逃さないで下さいね!

最初曲メロを受けて、ゆったりしたフレーズなんですが、例えば左手の低音部とかは、裏のリズムを刻んだりして、早いパッセージ(フレーズ)を意識させます。
そうして、右手のメロディも、跳ねるように16分音符を引っかけたりして、徐々に少し速いテンポの曲であるかのように、耳を麻痺させますね。
で、2:46頃から、ここぞという時に、流れるようなフレーズを畳み込むように披露します。
でもまたフレーズはゆっくり、もたったり、引っかけたり、じらしてみたり、刻んでみたり、畳み込んで来たり・・・セクシーで、聞いていて身もだえしそうです。

不思議なのは、この曲のローズ・ピアノでは、トレモロを使っていません。
トレモロとは、以前も書いていますが、奏法としてのトレモロではなく、別名ビブラート・ノブとも言われる、ローズ・ピアノの音をスピーカに左右に、回転するように揺らして出力する機能です。

音楽的に、トレモロを使わない理由が、説明出来ません。
同じアルバムの、「Not A Little Girl Anymore」では、思いっ切りトレモロを使っています。
パッと考えられるのは、以下の理由でしょうか?
①トレモロを使うのを忘れて、録音した(マサカネ・・・)
②トレモロは、MTR(マルチ・トラック・レコーダー)で左右2ch使いますが、何らかの理由でチャンネルが不足した

アドリブに使っているスケール(音階)や音使いも独特で、素晴らしいのですが、ここまでの話になると、アドリブ演奏者しか分からないでしょうから、書くと長くなりますし割愛します。
フェードアウトしちゃいますが、もっと聞かせて!!

http://www.youtube.com/watch?v=KFuVQl3TLa4&feature=player_embedded

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