Music.miwa

2012年10月 3日 (水)

ヒカリへ / miwa

久々の音楽ネタです。
実は意外に思うかも知れませんが、このブログで人気があるのは、音楽ネタです。
地味にコツコツアクセスを稼いで、通算4-5千のアクセスを稼いでいるのが、いくつもあります。

この曲は、フジテレビのドラマ、「リッチマン、プアウーマン」の主題歌であり、挿入歌でもあります。
ドラマは、自分としてはリアリティに欠け、残念な内容ですが、この曲が好きなので、惰性で見ていました。

miwaは、自分が紹介しなくとも十分有名でしょうが、慶大生のシンガーソングライターで、アコースティックギターの弾き語りの曲があるかと思えば、対照的に疾走感のあるロックの曲もあります。
ギブソン社のエレキギターを持ち、ギブソンのサイトで紹介された、初めての日本人女性でもあります。

今回の主題は、曲の戦略と、メロディとコード、アレンジについて。
この曲の詩も、なかなか良いのですが、そこまで書くとボリュームが増え過ぎて、収拾がつかなくなります。
今回、詩については割愛します。
なるべく分かりやすく書くつもりですが、音楽用語を避けて通れませんので、ハードルが高いかも・・・いやハードル高いです。


曲の戦略について

まずは曲の戦略について、考えてみましょう。

曲を作るきっかけとなるものは、メカニズムは分かりませんが、人に説明出来ない、ある意味神の力の後押しのようなものが必要です。
しかし1から10まで、神の力で作れる事は稀で、きっかけはせいぜい多くて10%くらい。
きっかけを掴んだ後は、残り90%は自分で肉付けするしかありません。

曲の戦略とは、きっかけを掴んだ曲を、どちらの方向に導くのかと言う事です。
この時、作った曲の特徴を考え、どんな曲に仕上げるのか・・・ここで誤ると、曲メロは良いのに、凡曲となる可能性もあります。

この曲は、miwa初の4つ打ちエレクトロだそうですね。
4つ打ちエレクトロとは、バスドラムのビートが、4分音符を刻むノリの事で、通称タテノリとも呼ばれています。

曲の構成はA-A'-B-B'-C-C'-D-D'型です。
音楽が良く分からない方は、何のこっちゃでしょうから、フレーズの変わり目の歌詞との対応を以下に示します。

A=理想現実ワンクリック~
A'=地球の裏より遠い距離~
B=悲しみの生まれた場所たどって
B'=その傷優しく触れて癒せたなら
C=溢れるおもい 愛は君を照らすヒカリになれる切ないほどに
C'=たとえ描く未来 そこに私がいないとしても
D=運命だって引き寄せて輝き続けたいよ
D'=奇跡だっておこせるって信じたい

A-B-C-D各々、コード進行は微妙に異なるのですが、実は和音のテイストは似通っています。
大雑把な言い方をすると、ハウスミュージックなんかの循環コード(繰り返し演奏する和音)的とも言えます。
(ハウスの場合だとずっとAの循環コード・・・またはA-A'の循環コードとか)

miwaはこれを意識したのか、していないのか?
ドラマが先にあって、曲を作ったそうで、ドラマがIT企業を舞台にしていますので、合わせて4つ打ちエレクトロにしたのでしょう。
これは、妥当な選択ですね。
4つ打ちエレクトロは、こうしたシンプルに循環する音楽との相性が良いのです。メロディにも、疾走感があり、4つ打ちエレクトロとの親和性もあります。

もうひとつ、miwaはファルセット(裏声)で歌います。
歌は上手なのですが、歌にパワーがなく、線が細いのは少々残念です。
そしてこの曲もファルセットで歌っています。
4つ打ちエレクトロを意識してか、軽くボコーダー(Perfumeでお馴染みのボーカル音声をシンセ音に変換する楽器)かけているように思え、とにかく声が機械っぽいです。
しかも以外にも、この機械っぽいエフェクトが、miwaの地声と相まって、とても良いです。

つまり、曲の戦略として、正解だったと言えますね。


1コーラス内の曲構成について

次に、曲構成について、もう少し考えて見ましょう。
4つ打ちエレクトロの曲にする・・・つまりは曲メロのリズムもタテノリにしがちです。
例えば、Perfumeの「コンピュター・シティ」みたいに。

メロディのリズムがタテノリとは、4つ打ちの頭・・・特に小節の頭にメロディの始まりがあり、メロディが基本4つ打ちにあわせたものですね。

miwaはどうしているかと言うと、以下が曲の出だしの楽譜ですが、メロディのリズムは明らかにタテノリではありません。
例えば、「ヒカリの速度に変わっても」はシンコペーション(タテノリとは間逆のアクセントのずらし)です。

楽譜を載せないで、がんばろうと思っていましたが、ついに載せちゃいましたねぇ。

メロディをタテノリにしないのは、悪い事ではありませんが、やり過ぎると4つ打ちエレクトロと親和性が悪くなります。
しかし曲は、ぎりぎりセーフな感じで、4つ打ちエレクトロとも合いますし、例えば「ヒカリの速度に変わっても」みたいなシンコペーションが、むしろ曲に変化を与え、とみすれば単調になるのを防いでいます。

もう1つ、上記のB-B'のメロディーは、他の疾走感のあるメロディと違い、白玉(2分音符以上音を伸ばす)を多用したものになっていますが、これがクッションになって、すばらしいサビ、C-C'につながって行きます。
C-C'も「溢れるおもい」の「おも」の部分を伸ばす事で、他のメロディと対比となり、変化を与え、単調にならないよう工夫されていますね。

4つ打ちアレンジなのに、メロディはシンコペーションを多用しているのは、狙いなのでしょうか?
この曲はいつ作り、そして4つ打ちエレクトロと言う決定がいつなのか分かりませんが、自分の印象では、miwaが4つ打ちエレクトロを意識せず、自分の思うがままに作ったように思いますね。
結果として、良いメロディです。
結果オーライでしょう。


全体の曲構成について

今度は、全体の曲の構成について、考えて見ましょう。

(1cho)A-A'-B-B'-C-C'-D-D'
(2cho)A-A'-B-B'-C-C'-D-D'
E-F-E-F'
C-C'-D-D'

「E-F-E-F'」は歌詞で言うと、「人は悲しみを知るために~幸せはいつだってそこにあるのに」

この曲の良さは、疾走感のあるサビ「C-C'-D-D'」ですね。
どんなものでも言える事ですが、クリエイティブな仕事とは、持ち味(長所)をどう活かすかと言う事だと思います。
つまりこの曲については、このサビをどう活かすか。
しかし自分には、それについて考慮したように思えません。

「E-F-E-F'」は、サビを活かすよう練られたものじゃなければいけません。
良く解釈すれば、サビの疾走感に対して、ゆったりとしたようなメロディの対比・・・とも言えるのですが、逆にこの部分がなかったと考えて下さい。
曲として成立するでしょう?
自分には、無駄なフレーズにしか思えません。

1コーラス、2コーラス(まあメロディは一緒ですけどねw)は素晴らしいのに、この「E-F-E-F'」でさならる化学変化を起こさないのは、残念な事です。
そして1曲丸々聞いた時に、少々飽きが来るのは、全体的な曲構成が、きちんと練られていないからだと思います。

1コーラスだけ見ると、とても良い曲なのに、全体としてもう少し考えていれば・・・と、惜しい気がしますね。
曲構成は、誰が考えたか分かりませんが、ほとんどの場合作曲者が考える事が多いので、miwaじゃないかと思います。


コード進行とメロディについて

コード進行について、見て行きましょう。
実は、執筆を始めたのは、8/20頃ですので、曲の発売から1週間たっていない頃です。
ビックリな事に、曲を発売してからそれほど経っていないのに、コードを掲載しているサイトが色々ありました。
これって、耳コピー?

一般論として、コードについての一番大きな誤解は、コードは、メロディに対して、最も調性感の良い和音ではありません。
楽器が得意でない作曲者は、しばしばメロディに対して、最も調性感の良い和音を使いたがります。
しかし、コード進行は、アレンジの一環ですので、演奏全体としてすばらしいと思える響きであれば良い訳で、単純にメロディに対して調性感が良くなくてもいいんです。
従いまして、アレンジとしてのコードネームと、メロディに最も調性感が良いコードは全然異なる訳です。

出だしは、「C-G」の繰り返しです。
いえ、Cの和音(ドミソ)には、ギターがD(レ)の音を発しているので、C9とかConDと解釈しても良いでしょう。
コード進行を見ると一見ハ長調っぽいですが、メロディから、曲のキーはG(つまりト長調)です。

ジャズのコード進行に、ツーファイブ(Ⅱ-Ⅴ)と言うのがあります。
ツー=2度、ファイブ=5度。
代表的ツーファイブのコード進行は、例えば、「Ⅱm7-Ⅴ-Ⅰ」と言うもので、音楽理論を知らないと意味不明ですよね。
キーをGとすると、1度はG、2度はA、5度はDですから、「Am7-D7-G」と言うコード進行になります。

ツーファイブは、曲を作るのでも、アドリブをするのでも、様々な応用編も含め多用されています。
実は、Perfumeの曲を書いている、田中ヤスタカは、Perfumeの曲でツーファイブを多用しているのは、有名です。
キーをGとすると、Am7はサブドミナントコード、Dはドミナントコード、Gはトニックコード。
人間は、和音が、サブドミナントコード→ドミナントコード→トニックコードに向かった時、トニックコードで最も安定を感じるそうです。

さて、この曲のコード、C9(ドレミソ)に対し、Am7(ドミソラ)と和音構成が似ていますね。
Cの代用として、Am7が使えるのは、前述の通り。
C9には、Gのキーに対する5度の音、Dが入っていますので、Am7-D-Gと言う、典型的ツーファイブが隠れているとも解釈出来る訳です。

曲の戦略のところで、和音のテイストは似ていると書きましたが、全編において、Gがキーのツーファイブテイストな曲(しかし全く同じコード進行ではないですけど)だと言う事が、お分かり頂けますでしょうか?
しかし、実際アレンジしているのはツーファイブではなく、もっとシンプルなコード進行ですけどね。

サビは「CM7-D-Em7-G」で、アレンジではCを使っているようですね。
でもメロディでは、B(シ)を使っていますので、CM7の方が、調性感が良いです。
ここでの「Em7」は、Ⅵm7で偽終止っぽい使い方です。

偽終止とは、例えばツーファイブでは、「Ⅱm7-Ⅴ-Ⅰ」とトニックコードに至るところを、「Ⅱm7-Ⅴ-Ⅵm7」のように、ドミナントコードにつなぐ事で、終わるのではなく、次のフレーズにつながる雰囲気を出すコード進行です。
終わりそうで、終わらない・・・だから偽終止と言う訳です。
もっともこの曲なんかも、コードについては色々解釈が成り立ちそうですので、まあ1つの考え方と思って下さい。

試しに、以下の譜例のように、オシャレな偽終止のコード進行、「C-D-Bm7-B♭m7-Am7-A♭7」と言うコード進行のアレンジも可能ですよ。
ここで使ったB♭m7やA♭7は、転調ではなく、半音ずつ下がる過程の経過のコードですね。


アレンジについて

この曲、キャッチーな良いメロディで、アレンジも、いかにも4つ打ちエレクトロと言う感じですね。
このいかにも4つ打ちエレクトロと言うのが、最低限の仕事はしていますが、残念ながら不要な音が多過ぎて、自分の好まないアレンジです。
自分は料理でも、意味なくたくさん食材を使うのは、好きではないです。
音楽でも一緒です。

誤解しないで頂きたいのは、音数が多いのが嫌いな訳ではありません。
意味のない音が多いいのが、好きではないのです。
聴いていると、例えばサビなんかボーカルはコーラスで厚みがついていて、ピアノの音、シンセストリングス、4つ打ちシンセベース・・・自分にはカオス状態にしか聞こえません。
先に、曲を聴いていて飽きると書きましたが、それはこの意味なく音数ばかり多くて、単調なアレンジも一因のように思えます。

厳しい事も書きましたが、良いメロディが名曲の第一歩であり、その意味では自分は好きな曲です。

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